52歳弟の「孤独死」が兄に作り上げさせた仕組み その先に起こりうる悲劇を防ぐために
現役世代に向けて、孤独死を防止できないかという動きもある。
さまざまな対策の中でも現役世代の孤独死に着目し、単身者向けに新たなLINEの見守りサービスを行っているのが、特定非営利活動法人エンリッチだ。
同NPOの代表理事である紺野功氏は、弟が52歳という若さで孤独死した。自宅でシステムエンジニアを生業にしていた弟は、内向的な性格で独身の独り暮らしだった。
「弟は、仕事人間で、アル中で部屋も荒れていて、不摂生で完全にセルフネグレクトでした。弟がお酒を飲むのをおふくろと私はずっと心配していました。ただ、正月に会ったときには、なんかやせたなという印象はありました。亡くなる2日前に弟の携帯にも電話をしているんです。元気か、と。今思えば酔っぱらっていたのか、ろれつが回っていませんでした」
すでに事切れた弟の部屋を訪ねると…
仕事の取引先の社員が、電話がつながらないことを心配して、家を訪ねていくと、すでに事切れた弟の姿があったという。
警察の検視解剖の結果、死因は低体温症だということだった。
「弟の死因は低体温症だと聞いて、驚きました。2月とはいえ、数日は意識のない状態で生存していたんじゃないかな、と警察官が言ってました。もう少し早く私が部屋を見に行っていれば、助かったかもしれないんです。弟の遺体はとても見られる状態ではなくて、生前の姿とはまったく違っていて、老人そのもので、ショックでした」
紺野氏は、弟の部屋を訪ねて、驚いた。冷蔵庫の中には、数カ月前の食べ物がそのまま放置されてあり、いわゆるモノ屋敷で、不摂生な生活を送っていたのは明らかだった。そして、パソコンが38台、モニターが20台以上、ほこりを被っていた。その片隅には何千冊ものパソコン雑誌が山積みになっている。寝るスペース以外のすべてが、パソコン関連のモノで埋め尽くされていた。
確かに、仕事で使用するものもあったが、こんな環境で生活していたら体を悪くするのも当然だと感じたという。
「現在の見守りサービスは、高齢者向けのものが圧倒的に多い。でも、弟の孤独死によって感じたのは、弟みたいな40代、50代の現役世代にも必要なんじゃないかと思ったんです。孤独死を完全に防ぐことはできないと思うんですが、なんかあったときに、悲惨な状態になることを防ぐことはできるだろうと思っています」
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