30代主婦は「扶養内パート」で生涯1億円損する 「妻は家を守る」にこだわると老後は暗い
では、奥様が今のパート勤務を、今のペースで続けていったら、この先どうなるでしょうか。
現在の36歳から、一般的な定年の60歳になるまで、あと24年間このまま働き続けた場合、奥様は2304万円の収入を得ることになります。ご主人の扶養内、すなわち専業主婦(国民年金の第3号被保険者)として過ごすわけですから、保険料の負担はありません。
奥様は結婚前に会社勤めの経験があり、そのときは厚生年金に加入し、保険料を自分で負担していました。その数年間の厚生年金も合わせると、奥様の65歳以降の年金受給額は額面で7万円(年間84万円)。65歳から90歳までの25年間受給すると2100万円になります。さっき計算した60歳までに得る就労収入と65歳以降の年金収入を合わせると、4404万円です。
これから先の生涯収入として4000万円以上得られるので、「結構多いな」と感じるかもしれません。しかし問題は、前述したように、いま月7万円を貯蓄から取り崩していること。奥様の65歳以降の年金受給額を、先取りして使い込んでいるようにも見えます。このままの状況が続けば、やがて間違いなく行き詰まるでしょう。
年収250万円まで増やせれば手取り額は大幅回復
詳しく話をうかがうと、奥様は、結婚前に働いていた職場から「戻ってこないか」と声がかかっているそうです。子どもは小学校の中学年になり、留守番や自分で習い事に行くこともできるようになりました。職場復帰は現実的な選択肢です。
職場復帰すると、「年収は250万円ほど」とのこと。「妻の社会保険の壁」(年収130万円)を越えてしまい、奥様は自分で社会保険料を払わなければなりません。しかし、ここまで年収を増やすことができれば、社会保険・税負担はあるものの、「働き損」にはならず、手取り額は十分回復できます(分岐点は年収153万円くらいが目安です)。
計算してみると、職場復帰した場合の奥様の手取り月額は17万円。これで毎月7万円の赤字を出している家計は相当改善するでしょう。この職場に戻り、今後24年間、同じ条件で就労すれば、60歳までに4896万円の収入が得られます。また、「妻の社会保険の壁」を越えて働くメリットとして、厚生年金に加入することで老後の年金額が増えます。
奥様の場合、標準報酬月額22万円で働き続けたとすると、老後の年金収入は月額約9.7万円(年間117万円)に増え、65歳からの25年間で2925万円を得ることになります。これに60歳までの収入を合わせると7821万円。ご主人の扶養の範囲内で今のパートを続けていく場合に比べ、生涯収入は1.8倍になります。
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