「自衛官よりレア」女性バス運転手は増えるか 業界熱望の「女性運転手」を定着させる方策

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また、バス業界と一言で言っても、運行ダイヤが1日、1週間単位で決まっている路線バスと、長距離の貸切バスでは勤務形態が異なる。路線バスの場合、シフトに入っている日の拘束時間は長くても、始業と終業時刻は決まっており、それ以上の残業はないからいい、と考える運転手も少なくない。

今後、女性運転手を増やすには、短時間勤務も選べるような環境を作ることが長期的には人材獲得にはプラスになるだろう。

今後、バス業界が直面する課題を予想

これまで取材してきた他業界の女性活躍に関する取り組みを振り返ると、今後、バス業界が直面する課題を予想できる。それは、結婚・出産・育児・介護など、ライフイベントとの両立だ。つまり、現在1%台にすぎない女性運転手の採用から数年~10年後には、就業継続という次なる課題に直面する。この時期までに長時間労働一択の現状を変える必要がある。

さらに女性が増えてくると、未婚・子どもなしの女性や男性と、既婚・子どもありの女性の処遇格差が問題視されるようになるはずだ。いわゆる「資生堂ショック」で、女性活躍先進企業の同社が取り組んだ課題を今から先取りしておくことで、10数年後に来る課題に対処できるだろう。

また、女性に限らず、家事・育児・介護などケア責任を持つ男性運転手も増えてくる未来を見据え、性別を問わず働き方の選択肢を増やすことも、求められるようになるはずだ。

一般社団法人女性バス運転手協会 代表理事 中嶋美恵氏(写真:尾形文繁)

昨年、ある会合で、首都圏のバス会社に勤務する女性運転手と話す機会があった。この方は、かつて同じ会社にバスガイドとして勤務していた。「当時、女性の運転手は採用していなかったから」と言う。その後、転職などを経て、再び同じ会社に運転手として勤務している。

この話を聞いて思い出したのは、20年前、筆者が経済誌記者をしていたときのことだった。九州の大手通信会社に取材に行くと、取材先から何度も「女性の記者さんなんですね!」と驚かれた。取材先は誰でも知っている大企業であり、先進的な人事制度を持っていた。先方には悪意はまったくなかったから、いわゆる暗黙のバイアスの問題であろう。

時代が変わり、かつて「男性の仕事」とされた領域にも女性が増えてきた。それと呼応するように、街で赤ちゃんや子どもを連れて歩く男性の姿を普通に見かけるようになった。私たちの子どもが大人になる頃までに、女性の運転手も男性のバスガイドも、普通に見かけるようになったらいい、と思う。

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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