スルガ問題どこ吹く風「マンション投資」の熱狂 競争が激化する一方で、融資環境には異変も

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競争相手は同業者だけではない。駅から近く、コンパクトな土地はビジネスホテルも同様に狙っているからだ。ホテルであれば土地の入札で多少高値づかみをしても、運営を続ければ資金は回収できるが、区分マンションでは利回りの低下につながるため、おいそれと価格転嫁ができない。東証2部上場の投資用マンション会社、デュアルタップの本田一郎取締役は、「投資家からの引き合いは強いが、よい開発用地を仕入れるのが難しくなってきている」と語る。

用地不足から供給戸数が頭打ちの新築マンション。それを埋め合わせるように、各社の関心は中古区分マンションの仕入れ・販売へと向かう。「中古の仕入れにも力を入れていく」(FJネクストの伊藤氏)。

新築よりも値頃感があり、利回りも高い中古は新築と同様に好調だ。中古区分マンションの販売で大手の日本財託では、「通常100人程度が来場するセミナーが、今年3月には180人以上が訪れた。物件によっては抽選にもなるほどだ」(橋本文治・取締役コンサルティング本部長)。

投資用不動産の専門サイト「健美家(けんびや)」によれば、首都圏の中古区分マンションの価格はうなぎ登り。それと反比例するように利回りは低下の一途を辿るものの、低金利の恩恵に加えて資産運用目的での客が一定数いるため、人気が衰える様子はない。他方、「ここ1~2年くらいの間に物件の仕入れ競争が激しくなり、仕入れ値も上昇している」(橋本氏)など、中古物件についても奪い合いの様相を呈している。

熱狂が冷める日

活況呈する区分マンションだが、懸念材料がないわけではない。これまで融資厳格化の影響を受けない安全地帯とされていたが、現場では異変も起きている。都内のある区分マンション開発業者では、3月から提携する複数の銀行から新規融資の終了を告げられた。ほかの金融機関でも、4月から金利の引き上げや借主の年収を新たに条件に据えた。

ある地方銀行は「1棟・区分を問わず投資用不動産への融資は様子見モードだ」(都内の投資用マンション開発会社)。「投資に値する優良物件の持ち込みが減ってきている」(都内の金融機関)という事情もある。

資産運用という触れ込みで、一般のサラリーマン世帯にまで拡がりを見せつつある不動産投資。だが過熱度合いが強まれば、冷や水を浴びせられる事態も起こりうる。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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