三菱「デリカD:5」公道で乗ってわかった実力 12年ぶりの刷新で、何がどう進化したのか

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こうした操舵力の軽減は、パワーステアリングを従来型の油圧式から電動式に変更したことで達成した。燃費数値の向上に寄与することで知られる電動式パワーステアリングだが、デリカD:5ではステアリングの操舵補助(≑パワステ機能)を行うモーターをタイヤの近く(=ドライバーのステアリング操舵力が加わるシャフトから遠く)に配置するデュアルピニオン方式を採用。これにより、じんわりとしたドライバーのステアリング操作に対して遅れなくスッとクルマが反応し始めるようになり、またクルマ全体が軽やかに動くようになったと感じられる。

乗って感じた静粛性の向上

エンジン性能にも改良が加えられた。尿素水を使って排出ガスのうちNOxを除去するSCR触媒は環境対策の目玉だ。一方、肝心の走行性能に関する改良は、その多くが市場からのニーズに応えたものだ。

新旧ディーゼルエンジン同士で比較してみると、日常走行で実感できる最も大きな違いは騒音値の低下、つまり静かになったことだ。値にすると1列目で2㏈(A)、2列目では1.5㏈(A)とそれほどの違いがないよう思えるものの、エンジン燃焼音のうち「ガラガラ」という高めの音が耳に届きにくくなっている。

静粛性が向上したディーゼルエンジン(筆者撮影)

しかもこの静粛性の向上は、実際の走行シーンで遭遇する一般的な走行時(アクセルペダル開度にして20%以内)に大きな違いとして感じられた。これにはエンジン単体の静粛性向上だけでなく、ボディ各所に音を遮断する遮音部品(例/フロントガラスの遮音ガラス化)や、音を吸収する吸音部品(例/ラゲッジルーム床下の吸音材をチップウレタン化)を採用するなど、ボディ側の進化も大きく貢献している。

走行距離を延ばしていくと6速から8速へと多段化されたオートマチックトランスミッション(トルクコンバーター方式)がもたらす複数の効果を確認できた。8速化の狙いは、ギヤ段数を増やすことで1速のギヤ比を低くすることと、反対に8速のギヤ比を高めること。これにより発進時はより力強く、高速走行時は低いエンジン回転数(80km/hでは約1200回転)を保てるようになった。

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