格之進「燻製ハンバーグ」が目指す新しい価値 冷凍して燻製することで「薫り」を引き出す
では実際の味はどうだろうか。試食会当日は、同社の提供するハンバーグや国産牛を、冷燻、非燻製で食べ比べた。試食用に供されたハンバーグは、岩手県花巻市のブランド豚「白金豚」と国産牛を使用し、塩糀でさらにうま味を引き出した「金格ハンバーグ」だ。
まず非燻製のハンバーグを食してみた。肉はふわりとして口の中でほどけるようで、塩やソースをつけるまでもなく、うま味があってそのままでも十分においしい。
対して、燻製ハンバーグのほうは“未体験”な味わい。確かに燻製の薫りなのだが、単なる燻製というより、ハンバーグの燻製だからこそ出る味わいというべきだろうか。もともとの金格ハンバーグの味に、さらに異なる薫りのベールがかかり、味に奥行きと複雑さが加わっている感じだ。
牛肉に関しては、メガネ肉の冷燻と非燻製、冷燻の霜降り部位などが供された。非燻製のメガネ肉も、肉本来のうま味がしっかり感じられるワイルドな味わい。対して燻製のほうは、意外にも“爽やかさ”が加わっている。
肉の味がダイレクトに感じられる非燻製より、食べやすいと感じる人もいるかもしれない。脂肪の多い霜降り部位は、もともとの脂肪の甘みに、肉のうま味、燻製によって引き出された薫りなどが重なり合い、全体としてマイルドな味わいになっている。
「牛の価値」を上げるのが挑戦であり使命
千葉氏によると、こうした冷燻技術は、高級肉の黒毛和牛ではなく、あえてホルスタインなどの国産牛などに採用していきたいという。試食会で黒毛和牛100%の「黒格」や、黒毛和牛と白金豚の「白格」ではなく、国産牛と白金豚の「金格」ハンバーグを提供したのも、その意図からだろう。
「戦前と戦後の牛の種類は(交配が研究されるなどしたため)異なっている。焼き肉、すき焼きといった調理法は牛が食べられるようになった頃に開発されたもので、牛の変化に対して、調理法は未開発だと思っている。
料理が進化することで、牛の味・価値はもっと変わっていく。牛を育てている生産者は、自分で肉の金額を付けられない。枝肉の状態で価値がつけられるからだ。生産者がその金額に納得しなくても、牛は戻ってこない。だから牛に付けられた価値を上げるのが使命と思っている」(千葉氏)
牛肉市場では、枝肉(牛から頭、四肢の先、尾、内臓を取り除いたもの)の状態で日本食肉格付協会による格付けが行われ、仲買人が値をつける。格付けは、脂肪の交雑(霜降りの度合い)、肉の色沢、肉のしまりおよびきめ、脂肪の色沢など4つの項目で判断する「肉質等級」と、枝肉からとれる肉の量によって決められる「歩留等級」の2つの基準により、肉の価値を決めるものだ。
どちらも最高ランクであればA5という格付けとなる。A5という言葉は最高級肉を示すものとして知る人は多いが、A5にランク付けされるのは、黒毛和牛のような「和牛品種」のなかでも一部。交雑種と呼ばれる、和牛と乳牛などを交配した国産牛では、なかなかAや5といった価値が付けられることはない。
そこに、調理法などによる新たな価値を加えていこうというのが、千葉氏の挑戦であり、使命としていることのようだ。
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