あの京セラが太陽光発電小売りに乗り出すわけ 関電と合弁会社を設立、パネル販売から脱却

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京セラは自社で太陽光パネルを製造している。全国の工務店など100店舗強を「京セラソーラーフランチャイズ」に指定し、大手ハウスメーカーだけでなく、中小の戸建て住宅向けにも攻勢をかけてきた。

しかし、中国のパネルメーカーの台頭でパネル価格が大きく低下。長期契約を結んでいたパネル原料となるポリシリコンの価格が大幅に落ち込んだことで、2018年3月期と2019年3月期に合計1000億円の引当損失(評価損など)を計上せざるをえなかった。こうしたことから、太陽光発電事業を含む京セラの「生活・環境」セグメントは、2018年3月期に550億円の営業赤字に転落。2019年3月期も同程度の赤字になった模様だ。

名誉会長「肝いり」の太陽光事業

京セラは1975年に太陽光発電の研究開発を始め、1993年に日本で初めて住宅用太陽光発電システムの販売を始めた老舗である。かつ、太陽光は創業者である稲盛和夫名誉会長の肝いりの事業だ。さらに、谷本秀夫社長は2021年3月期に連結売上高2兆円を目指すとしており、これを達成するうえで太陽光事業のテコ入れは欠かせない。

これまでも工場を集約させるなど、太陽光発電事業の構造改革に取り組んできた。長期契約の高値のポリシリコンは2019年3月期に一巡するため、今期以降は一定の収益改善は見込める。

とはいえ、再生可能エネルギーによる電力を一定期間買い取るFITの価格も年々下がっており、国内の太陽光パネル需要は一段の冷え込みが避けられない。中国製品と価格でぶつかっても勝ち目が薄いだけに、「屋根貸し」による自社製パネルの販売先確保を狙う。

一方、2016年の電力小売り自由化以降、電力会社のエリアを越えた競争が激化する中、関電として京セラの営業力は魅力だ。「京セラのシステムは高品質で長期的な信頼がある」(関電の岩根社長)のも、関電が京セラと手を組んだ理由だ。

京セラにとっても電力小売りの経験、消費者の安心感など関電の存在は大きい。関西の優良企業のタッグは太陽光発電事業を軌道に乗せられるだろうか。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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