日本人は経済を「信仰の対象」にしてしまった アトキンソン×北野唯我「日本の生産性」対談

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北野:なるほど。以前、ネットでソニーの話を取り上げるとPVが伸びると聞いたのですが、理由はみんなあれこれ自分の意見を言いたいらしいんです。

北野 唯我(きたの・ゆいが)/兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。執行役員として事業開発を経験し、現在同社の最高戦略責任者、レントヘッドの代表取締役。著書に『転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)がある(撮影:尾形文繁)

ソニーは1回経営不振に陥った後、また回復基調にあります。しかし、それに対してOBやOG、昔のソニーファンが「これはソニーの稼ぎ方じゃない!」的なことを言うらしい。ソニーっていうのはもっとテクノロジードリブンで、R&Dにもっと投資してないといけない。こんなに利益を出すべきではない!みたいなことを言うらしいのです。

これって、正に「信仰」ですよね。ソニーがこうあってほしいっていう幻想を、経済という、まったく違うフィールドにぶつけているので、永久に議論がかみ合わない。経済は信仰ではなく現実であり、雇用ですからね。

アトキンソン:現実の世界なのですから、データを正しく見ることが絶対に必要です。

最近、コンビニが24時間営業をするべきか否かで、いろんなことが言われだしました。夜も開けていると売上が増えるんだと、感覚的に言っているんです。しかし、私に言わせれば、24時間やるべきか否か、どの店がやるべきか否かというのは、データを見れば一目瞭然のはずです。

夜中営業すると売上は何割、コストは何割増える。これは分析できるのだから、分析すればいいだけです。こんなこと、議論の余地はありません。数字はあるんですから。

しかし、マスコミの報道を見ていると、夜閉めると売上が増える、いや減る、と議論している。感覚的な話でしかないのです。

これからの「正しい会社選び」

北野:同感です。私は最近、学生の就職活動、「仕事選び」について課題意識をもっているのですが、やはりこの領域でも、数字ではなくイメージや感情で会社を選んでしまうことが多い。学生の会社選びについて、何かアドバイスはありますか?

アトキンソン:若い人の場合、一番いいのは自分で起業することです。もしくは企業自体が若いところに行くべき。それは、社長の年齢で計れます。「社長は何歳ですか」というのが、実は重要な質問になります。

北野:何歳くらいまでなら大丈夫でしょうか?(笑)

アトキンソン:50代前半が上限でしょう。社長60歳オーバーだったら、やめておいたほうがいい(笑)。まあ、それは半ば冗談なのですが、会社が若くて、人員や業績が伸びている会社を選ぶことでしょう。

これから、伸びる会社とそうでない会社は、給料をどの程度出せるかによって二極化していくはずです。なぜかというと、給料を出せる会社に人が集まり、その会社はますます伸びる。するとまた人が集まるという形で、好循環が起きるからです。

今までの日本では、人口増加のメリットを享受して、経営者が賢くてもバカでも関係なく成長することができました。つまり、賢い経営をしようがしまいがそんなに差が大きくならなかったのです。

しかしこれからは違います。人口が減少するので、経営者がダメなところには人が集まらず、どんどんダメになってしまいます。こういった会社は、平均的には零細企業に多いでしょう。実際、零細企業の有効求人倍率はすでに無茶苦茶な数字になっています。

まとめると、社長が若くて、人も増えている会社。最後はその会社の財務諸表を見たうえで決めるのが、これからの正しい会社選びだと思います。

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