億単位のカネを捨て、より大きな果実をとった
そもそも「短期で、確実に稼げるチャンス」は、どのくらいのレベルだったのか。
スクエニが、ドラクエのスマートデバイス向けアプリを基本価格500円のところ、限定無料配信すると発表したのは11月28日だ。すると、なんと1日で目標の100万ダウンロードを達成。結局、配信わずか5日で、300万件以上のダウンロードを獲得した。
当初予想をはるかに超えたこの数の意味するものは何だろうか。スクエニ側にしてみれば、単純計算で500円×300万件=15億円以上の機会損失!が発生しているようにも見える(もちろん有料なら、ダウンロード数は圧倒的に少ないはずなので単純計算はできない)。しかし、この決断のウラには、表面的な金額以上に、大きな秘密が隠されているようにみえる。
その秘密とは以下の3つだ。
1つ目は、「ネギをしょった、大量のカモ」を獲得できたことだ。
筆者も含め、このご時世に、「ドラクエ1」という、約四半世紀も前のゲームのアプリをわざわざダウンロードする奇特な人たちは、間違いなくドラクエに思い出のある人たちだ。今後発売されるシリーズ商品にも興味を示す可能性が圧倒的に高い。つまり、恰好の超優良見込み客(要はカモ)である。
しかも、「ドラクエ無料」のインパクトは、SNS等で共有されるには絶好のネタだ。限定無料配信を発表するや、ランキング1位となる効果も重なり、スクエニは労せずして膨大な数の「カモたち」(筆者含む)を囲い込んだわけだ。一度にこれほどのカモ群を囲い込むことは、なかなかできない芸当だ。
2つ目は、「カモ狙撃用の高性能ライフル」を獲得できたことだ。
実は、スクエニが無料配信したのは、「ドラクエ1」ゲーム単体のアプリではなく、ドラクエ関連の「ポータルアプリ」だった。ゲームを始めるには、このポータルアプリを起ち上げる必要があるため、ユーザーは随時最新ゲーム等の情報を見せられる。しかも、スクエニは、「プッシュ通知」を使うことでその見込み顧客に、今後いつでも直接情報を配信できるのだ。効果が薄い一般のメルマガや広告と比べれば、「竹やり」と「高性能ライフル」くらいの差がある。
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