日本語学校、空前の「開設ラッシュ」に潜む不安 外国人の特定技能35万人時代に対応できるか
しかし、その後は浮き沈みの連続だった。1988年には、日本への留学を求める若者が急増し、ビザ申請に対応しきれなくなった中国・上海の日本領事館を取り囲む、いわゆる「上海事件」が勃発した。
韓国のビジネスマン相手の日本語研修がうまく軌道に乗ったかと思えば、アジア通貨危機(1997年)に遭遇したり、石原慎太郎都知事(当時、2003年)の「外国人犯罪キャンペーン」や東日本大震災(2011年)に直面したり。「(日本語学校を取り巻く外部環境は)ひどい波の連続。日本語学校の氷河期には、やめていった学校がいくつもある」(鈴木氏)という。
ある意味、入管当局の“さじ加減”1つで、日本語学校を生かすことも殺すこともできると言える。
増えぬ日本語教師、待遇で見劣り
そして今、過去に何度も経験した「日本語学校ブーム」が到来している。たしかに日本語学校の数は右肩上がりで増え続けており、日本語学習者の数も拡大している。
しかし、仮に拡大しようとしても、日本語学校には「成長の制約」がある。最大の問題は、日本語教育を担う日本語教師の不足だ。日本語学習者の数が増える一方なのに対し、日本語教師はあまり増えていない。文化庁によると、国内における日本語学習者数は2017年度に23万人を突破した。2011年度の13万人弱から2倍近く伸びたのに対し、日本語教師の数(ボランティアを含む)は約3万~4万人とほぼ横ばいで推移している。
理由の1つは、日本語教師の待遇がよくないことだ。文化庁によると、日本語教師の約6割がボランティア。非常勤教師が3割で、常勤教師は1割強に過ぎない。年配の教師が多く、50~60代で4割を占める。前出の鈴木氏は「日本語教師の給料は安い。老舗のある学校などは、ボランティア同様に安く使うところからスタートした。教師のなり手が少ないのは給料が安いからだろうが、今はものすごい人手不足だ」と認める。
日本最大級の年間3000人の日本語教師養成講座を持つ日本語学校大手、ヒューマンアカデミーは、この4月の新規入学者から日本語学校の授業料を6万円値上げした。寮費や教材費の有無で差があるが、授業料は初年度70万~80万円。同社国際人教育事業部の田中知信・エグゼクティブオフィサーは「われわれも教師が不足しており、教師の待遇改善を想定すると授業料据え置きでは厳しい。値上げは過去15年で初めてのことだ」と話す。
【2019年4月8日17時30分追記】初出時、ヒューマンアカデミーの日本語教師養成講座の人数に誤りがあったため、表記のように修正しました。
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