「独り負け」、第一三共が有望がん薬で反転攻勢

英アストラゼネカと7600億円受領の大型提携

第一三共の中期経営計画では、今後5年間に1.1兆円の研究開発費を投じ、がん分野に傾斜配分する。これで足りなければM&Aなどの事業開発投資枠5000億円を流用することも辞さないと、第一三共の首脳陣はことあるごとに繰り返してきた。

今回の提携では、DS-8201のグローバルの臨床試験(治験)などにかかる研究開発費を両社で折半する。一時金1500億円とは別に、2019年度以降から直ちに研究開発費の負担も軽くなる。台所に余裕があるとは言えない第一三共にとって、今回の大型提携はまさに「干天の慈雨」となる。

さて、そのDS-8201とはどういう薬なのだろうか。一言で言えば、抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれるがん治療薬の一つで、抗体でがん細胞をしっかりと捕まえ、強力な作用を持つ低分子薬でがんをやっつける。正常細胞も傷つけ、副作用の大きい化学療法(低分子抗がん剤)とは違い、多くの人に効き、その効き目も高いといういいとこ取りの利点がある。

大型ブロックバスターに育つ可能性も

DS-8201はこのADCの中でも良好な治験データをたたき出してきた。それゆえ、アナリストなどの評価も高く、それが第一三共の株価にも反映されている。DS-8201のピーク時の年間売り上げは、4000億円とも5000億円とも予想されている。現在、乳がん、大腸がん、胃がん、肺がんの4がん腫で治験が進められており、製薬業界でいう大型ヒット商品、年間売上げ1000億円超の「ブロックバスター」に育つ可能性が極めて高いとみられている。

「今回の提携にまったくの意外感はなかった」とアナリストの一人は言うが、AZを最終パートナーにした決め手はずばり、DS-8201への評価の高さだろう。第一三共は自社単独開発と他社との提携の両面を比較検討し、複数の大手製薬会社と実際に交渉してきた。

AZは「細かいところまで配慮してくれた」と第一三共の中山譲治・会長兼最高経営責任者(CEO)は打ち明ける。その一例が、販売方式や売り上げ計上の仕方を3地域で分けることにAZが合意したこと。日本は、第一三共が単独販売し、売り上げも全額計上する。AZにはロイヤルティを支払う。日本以外は第一三共とAZが共同販促し、損益を折半する。

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