カゴメが伊藤園を圧倒する個人株主獲得の要諦 株主総会で見せた「手厚い株主対策」とは?

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目下、カゴメの業績は堅調だ。米国子会社を売却した影響で2018年度の売上高は2099億円(前期比2%減)と減収だったものの、営業利益は120億円(同0.3%増)と微増益で、最高純利益を3期連続で更新した。

ただ、中身を見ると、営業利益の9割を稼ぎ出しているのは国内事業。海外事業は減益で着地した。海外では、ハンバーガーチェーンやピザチェーンにトマトペーストを販売する事業を展開しているが、市況に左右される商品のため安定的に利益を出すことが難しい。今2019年度は市況の悪化によって逆ザヤ状態での販売を防ぐために、高値で仕入れた商品在庫の削減を急ぐ計画だ。

食品スーパーへの提案を本格化

カゴメは不安定な海外事業については収益性の改善に当面傾注し、一方で国内事業の一層の拡大に力を注ぐ。同社の寺田直行社長は「海外よりも、今後の成長ドライバーになるのは国内事業。特に、新規に始める中食事業が重要だ」と強調する。

今回の総会が開かれた会場ロビーでは、カゴメ社員の管理栄養士による健康セミナーも開かれた(写真:カゴメ)

共働き世帯の増加による調理の時短需要の拡大を背景に、弁当や総菜などの中食市場は成長している。食品スーパーでも総菜コーナーを強化する動きが広まっている。ただ、カゴメは「(食品スーパーの店頭に並んでいるのは)揚げ物がほとんどで、実際の食卓で需要がある洋風メニューが圧倒的に少ない」(IR担当者)と見る。

そこで、食品スーパーに対して、オムライスや鶏肉のトマト煮など、ケチャップやトマトソースを多く使う「戦略7メニュー」の提案を今年度から本格的に推進。中食事業の強化により、3年間で売上高100億円の押し上げを狙う。

手厚い対応で個人株主を囲い込むカゴメだが、ファン株主を満足させ続けるためには業績の安定成長が大前提となる。海外事業の立て直しに加え、新事業の成否がそのカギを握っている。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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