カゴメが伊藤園を圧倒する個人株主獲得の要諦 株主総会で見せた「手厚い株主対策」とは?
カゴメが個人株主に対する取り組みを重要視し始めたのは、2000年のこと。この年、企業理念のひとつに「開かれた企業」というスローガンを掲げた。この理念に沿って、続く2001年には株主数がまだ1万人以下だったにもかかわらず、「株主10万人計画」をぶち上げた。
目標達成のために、まず注力したのが株主優待対策だ。同年に株主優待制度を導入。現在は新製品やリニューアル品など、その年に注力している製品を贈呈する。今2018年度は業績の牽引役になったスムージーなどを優待品とした。
個人株主と社長による座談会も開催
また、個人株主とのコミュニケーションにも尽力する。工場や自社菜園の見学会を頻繁に開催。毎年、個人株主が社長と意見交換をする場も開く。本社がある名古屋に加えて、東京、大阪、そして地方の1カ所で、個人株主10人に集まってもらい、社長を囲む座談会を実施している。
直接対話は密にコミュニケーションが取れる一方で、参加できる人数が限られる。そこで、同社は株主専用のメールマガジン「カゴメール」を活用して、より多くの株主へさまざまな情報を発信。およそ18万人いる株主のうち、カゴメールの登録者は5万人弱。決算情報に加えて、座談会などイベントのリポートも配信している。
カゴメールを使えば、株主も企業に直接、気軽に問い合わせをすることができる。決算発表直後や優待品の発送時期など、多い時には週に数百件の問い合わせや意見、感想が寄せられる。この問い合わせのすべての返信を、IR担当部署の3人で行っているという。
「株主の意見を日々聞いていると、興味のあることが変化してきていることがわかる」と、IR担当の仲村氏は語る。最近では、優待や商品に関する意見だけではなく、経営に関する質問も目立つようになってきている。そこで2018年に、初めて個人株主向けの決算説明会を数十人規模で実施した。2回目となる今年2月は、参加人数が100人にまで膨らんだ。
今年の総会に参加した株主数は、前年並みの2424人。11人の株主が質問に立ち、計18の質問が経営陣に投げかけられた。10時から1時間20分ほど続いた総会が閉じられようとすると、どうしても聞きたいことがあったのか、「質問をさせてくれ」と、男性株主が声を張り上げた。内容は、「海外事業の展開が遅すぎる。どうなっているのか」というものだった。
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