トランプ劇場の次のテーマは、「米中通商協議」ということになる。この点で習近平国家主席は戦々恐々といったところであろう。米中首脳会談の途中でトランプ氏に席を立たれたりしたら、メンツは丸つぶれになってしまう。「これなら確実に合意できる!」という見極めがつかない限り、首脳会談には応じないだろう。それまでは閣僚レベルの協議が続くことになる。首脳会談が実現するのは、6月28-29日の大阪G20サミットということになるのではないか。
したたかに振る舞うベトナムとシンガポールから学べ
さて、短い時間ながらベトナムとシンガポールを訪れてみて、この2つの国が「米中新冷戦時代」にたくましく対応していることに感心させられた。近年のベトナムは中国からの工場移転が増え、投資案件も目白押しで経済成長率は7%に及ぶ。米中通商摩擦は、ベトナムにとって追い風なのである。
かつてはアメリカと戦争した国ながら、今では東南アジア切っての親米国である。そうかと思えば、長い敵対の歴史を持つ中国とも上手に接している。共産主義国同士ということで、北朝鮮とも長いつながりがある。首脳会談が決裂した後の金正恩委員長も、ベトナム政府の大歓待を受けて、最後はご機嫌で帰国したという。
もちろんベトナムは親日国でもある。CPTPP(TPP11)のメンバー国でもある。とにかくどちらから見ても嫌われないようにできている。「全方位外交」ということでは、シンガポールも負けてはいない。東南アジアの「ハブ」国家という独自の地位を築いていて、いわば「お座敷を貸す」ことを得意技にしている。昨年の米朝首脳会談では、メディア対応から警備まで万全の心配りを見せた。筆者が到着した時も、飛行機がチャンギ空港に着陸してからホテルにチェックインするまでは1時間以内。どうしたらこんなに手際よくできるのか、不思議なくらいである。
もっと言えば、あのド派手なマリーナベイサンズという統合型リゾート(IR)施設は、「アメリカの知恵を使ってチャイナマネーを取り込む」という傑作である。
シンガポール政府は、いわば他人のふんどしで相撲をとっている。これに比べれば、先般閣議決定されたわが国のIR施行令などは、オペレーター企業をガチガチに縛っていて、本当に魅力的なものができるのかどうか、心もとない気がするくらいだ。ベトナムもシンガポールも、自国が相対的に弱い立場にあることを自覚していて、上手に生き抜こうとしている。学ぶべき点は少なくない、というのが5日間の短い旅の結論である(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら