──合同委での密約ですか。
1999年の合同委での合意において政府はアメリカ軍の低空飛行訓練についてほぼ現状追認していますが、その重要性を考えると、1987年以前にすでに合意が結ばれていた可能性はあります。
──ドイツ、イタリアとはだいぶ違いますね。
ドイツ、イタリアは航空法や騒音規制、環境規制など国内法をアメリカ軍に適用しています。何かあれば警察が基地内に入れるし、イタリアではイタリアの軍司令官がアメリカ軍基地の管理権を持っている。この点でも日本は後退している。かつてはアメリカ軍にも国内法が適用されると政府は明言していたが、ベトナム戦争中の戦車輸送阻止事件を機にアメリカの圧力が高まり、1973年にアメリカ軍は適用除外としました。
日本がもっぱらの被害者というわけじゃない
──政治家がカギだと思いますが、民主党政権の閣僚も自民党政権と同様の答弁でした。
核持ち込み密約などいわゆる4つの密約を明らかにしたことは評価できるが、破棄はしなかったし合同委の問題にまでは至らなかった。自民党でも河野太郎外相は2000年代初めに党の地位協定の改定を求める議員連盟の幹事長を務め、改定案をまとめているが、外相就任後そういった話はしませんね。
──司法は砂川事件判決の統治行為論から判断停止。正常化する方法はありますか。
民意ですね。イタリアではアメリカ軍機がロープウェーのケーブルを切断して20人が死亡、ドイツもアメリカ軍機墜落で死傷者が出るなどして、アメリカ軍を何とかしろという声が大きくなった。主権国家の責務は国民の基本的人権を守ること。イタリア、ドイツ政府は民意を受け止めてアメリカと交渉し地位協定を改定しました。
日本でそうならないのは、政府が民意を尊重しないから。アメリカ政府の圧力ばかり気にして、抜本的な改定ではなく運用改善で済まそうとする。基地の騒音軽減で合意したとしても「できる限り」などの文言が入って、結局、夜間、早朝も飛ぶ。
ただ、2018年8月に全国知事会が国内法適用、基地立入権など地位協定の抜本的な見直しを日米両政府に提言した。こうした声が地域から高まり、メディアによって実態が知らされれば、国会議員も無視できなくなる可能性がある。
──日本はもっぱら被害者、ではないという指摘も重要です。
日本の空で技量を高めたパイロットが戦地に赴くことはあるわけで、イラク戦争では在日アメリカ軍の部隊が爆撃をし、多数の人々を殺傷しました。横田空域や区域外の飛行訓練を黙認する日本は、アメリカ軍の攻撃の被害者からすれば間接的な加害者に見える、ということも意識すべきです。
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