女性の「映画音楽作曲家」が極端に少ない現状 ヒット映画にかかわっているのはごくわずか
女性戦士が主人公となる大作映画が、2本公開予定となっている。1つはパティ・ジェンキンス監督による、「ワンダーウーマン1984(Wonder Woman 1984)」、もう1つはニキ・カーロ監督による「ムーラン(Mulan)」の実写版だ(ともに邦題は未定)。
この2本の映画は監督も主人公も女性だが、起用されている作曲家はともに男性だ。
男性1200人に対し女性16人
映画音楽の世界で、女性の作曲家の名前が聞かれることはほとんどない。南カリフォルニア大学の研究によると、2007年から2017年までに公開された映画のうち、各年の興行成績上位100本の映画を調べると、作曲家として起用されていたのは、男性が1200人以上だったのに対し女性はわずか16人だった。
また、「テレビと映画業界の女性に関する研究センター」が発表したレポートによると、2018年のアメリカ興行成績上位250本の映画のうち、男性が作曲を担当したものが94%を占めたという。
一方で、「数字は暗たんたるものだが、今後の見通しはそうではない」と言うのは、アメリカ芸術科学協会の音楽部門の理事で、映画音楽作曲家としてベテランのローラ・カープマンだ。彼女は「いままで見たことがないほど、女性に手が差し伸べられている」と話す。カープマンは、同協会音楽部門の多様性の向上に努めてきた。いまでは、ロシアの作曲家、ソフィア・グバイドゥーリナらが会員に名を連ねている。
テイマー・カリは、白人男性ばかりの世界に存在する、数少ない新人女性作曲家の1人だ。彼女はディー・リーズ監督による2017年の映画「マッドバウンド/哀しき友情」で、初めて映画音楽を作曲した。カリは再びリーズ監督と組んで、同監督の新作でも音楽を担当する。
ニューヨークのパンクロックシーンで活躍するアフリカ・先住民系の彼女は、すでに「部外者の中の部外者であることに慣れていた」と話す。ほかの数少ない女性映画音楽作曲家と同様に、彼女も映画音楽の道を追い求めていたわけではなかった。だが、映画監督が彼女の作品を聴き、起用されたのだ。
今年公開予定の映画「ジョーカー(Joker:邦題未定)」は、有名なスーパーヒーローの映画では、音楽を担当するのは男性だけという傾向を覆すものだ。ブリ-・ラーソン主演の「キャプテン・マーベル」も同様だ。トルコの作曲家パイナー・トプラクが、マーベル映画では女性で初めて、作曲家として起用される。