女性の「映画音楽作曲家」が極端に少ない現状 ヒット映画にかかわっているのはごくわずか
ポートマンは、映画業界は「非常に用心深い傾向がある」と言う。「(映画監督も)以前によく似た感じの作品をつくったことがある作曲家に安心感を覚えるので、新たな作曲家が参入するのが困難になる。また、誰か別の監督が以前に起用した人物なら安全だという感覚もあり、それがとくに女性にとってのハードルを高くしている」。
ポートマンは、あからさまに女性を嫌う監督2人と仕事をしたことがあると言い、ある監督は、彼女がアクションシーンなどに使う「タフな音楽」を書けないだろうと決めつけたと話す。「私は、『冗談でしょう? そう言うなら、できるって証明してみせる』と思った」。
女性作曲家の背中を押す取り組みも
こうした状況の中で、より多くの女性が実際的な経験を積めるよう、また業界にアクセスできるよう、ワークショップがいくつか開かれるようになっている。例えば、サンダンス・インスティテュート映画音楽プログラムは、過去2年間、男女の格差解消を実現してきた。
ユニバーサル・ピクチャーズも、才能のある女性や白人以外の作曲家を見いだすために、映画音楽作曲家イニシアチブを立ち上げた。そこでの勝者は、ドリームワークス・アニメーションが製作するショートフィルム用にオーケストラの曲を書き、レコーディングを行うことができる。
ノラ・クロル-ローゼンバウムが、このプログラムの最初のショートフィルム「バードカルマ(Bird Karma)」の曲を書いた。彼女は「これまでは多くの人にとって、扉はほとんど開かれていなかった」と述べ、このイニシアチブがチャンスを与えたと称賛した。
ほかにも、新たなサポートが始まっている。2014年に女性映画音楽作曲家連盟が創設され、現在では400人近いメンバーがいる。同連盟はコンサートなどを通じて、女性作曲家の存在を知らしめ、公式な労働組合が存在しない孤独な職業である作曲家たちに連帯感を提供している。
同連盟の代表であるロリータ・リトマニスは、「女性の権利への意識の高まりや、#MeTooなどによって、(映画会社などに)行動が求められている」と話す。そして、主要映画作品の作曲で、「女性がオーディションのプロセスに加わるチャンスが増える」と心から思っているという。
女性たちの能力を考えると、そうあるべきだとドリーン・リンガー‐ロスは言う。彼女はブロードキャスト・ミュージックの映画音楽部門の幹部で、同社はトップクラスの映画音楽作曲家が手がけた作品の上演権を管理している。「作曲家の仕事は、感覚を研ぎ澄まして、感情を音楽的に解釈することだ。女性は伝統的にそれを行うのが得意だ」。
(執筆:Tim Greiving、翻訳:東方雅美)
© 2019 New York Times News Service
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