読売がDAZNと「包括提携」に至った両者の思惑 今季から巨人がDAZN放映されるだけではない

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その傘下にある、つまりアクセス・インダストリーズの投資先の1つという性格を帯びるDAZNは、企業価値・事業価値の向上というミッションを負う。そうした視点で捉えると、何としても巨人を配信ラインアップに加えたかった理由が見えてくる。

もちろん、巨人戦の放映開始を機に加入者数が増えればDAZNの事業価値はそれだけ上がる。一方で仮に加入者数の伸びが鈍かったとしても、巨人という”ブランド”が配信ラインアップに加わることは、それだけで大きな価値を生む、と考えたのではないだろうか。

”黒船”などとも呼ばれてきたDAZNが、日本市場において確固たる地位を築き、事業価値の最大化を目指すうえで、日本の象徴たる「巨人・読売」との提携は不可欠だった。

だからこそDAZNは、目先の採算はさておき、巨人戦の放映権をなりふり構わず獲りにいった、と思えるのだ。

今年は、広島とヤクルトの離脱によって10球団との契約にとどまったが、来年以降、プロ野球12球団の全試合がDAZNで視聴できるようになる可能性はある。すでに2017年からの10年契約を結んでいるJリーグと、プロ野球12球団を網羅するとなれば、DAZNは日本のスポーツ配信事業者として1つの“ゴール”に達すると言えるだろう。

今年はDAZNにとっての試金石となる

また今回の提携実現により、実績ベースで12球団と放映権契約を結んだことになる点にも注目しておきたい。それは、プロ野球の映像配信サービスが日本においてどれだけの事業性・将来性を有するのか、その判断材料となるデータがDAZN内に出そろうことを意味するからだ。

巨人のパワーはどれほどあるのか。プロ野球のパワーはどれほどか。それを知ることになる2019年は、DAZNにとっての試金石となる1年なのかもしれない。

日比野 恭三 スポーツライター

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ひびの きょうぞう / Kyozo Hibino

1981年、宮崎県生まれ。PR代理店勤務などを経て、2010年から6年間『Sports Graphic Number』編集部に所属。現在はフリーランスのライター・編集者として、野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを取材対象に活動中。

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