読売がDAZNと「包括提携」に至った両者の思惑 今季から巨人がDAZN放映されるだけではない
どうすれば、自前主義を貫く読売側を口説き落とせるのか。DAZNが考え出したのが、今回の包括提携の原型となる「従来とはまったく異なる、かなり多項目にわたるご提案」(山口氏)だった。
ポイントの1つは、日テレへの配慮だ。通常、試合の放映権は球団の売り物であり、その売り上げは球団に入る。巨人とDAZNが放映権契約を結んだ場合、日テレの競合相手に権利を売り渡す形となり、巨人が自らの利益のために日テレに犠牲を強いる、という構図になってしまう。
そこでDAZNは、「日テレが配信権を許諾する」という形の契約を提示したのだ。なおかつ、DAZNが配信する映像素材にはG+の中継映像を使うこととし、「G+」のロゴも映像に残すことになった。配信権許諾と映像素材提供にはそれぞれ対価が発生するはずだ。日テレに直接的な金銭メリットを提供することで「恩義」の問題をクリアしたように見える。
一方で、Hulu(月額933円・税別、以下同)やGLS(1500円)のユーザーが、サッカーのJリーグなども含め多様なスポーツコンテンツをそろえるDAZN(1750円・ドコモユーザーは980円)に流出する懸念は解消されていない。会見では「共存の道を探る」とされたが、具体的な説明はなく、いったん棚上げされた格好だ。
DAZNの“配慮”はそれだけにとどまらない
DAZNは巨人のオフィシャルスポンサーとなり、さらに巨人の原監督がDAZNのアンバサダーに就任することになった。
また、2月にサービスを開始したばかりのデジタルサービス「読売新聞オンライン」に、Jリーグやプロ野球などのハイライト映像を提供。
読売新聞オンラインのユーザーは、そのハイライト映像を無料で視聴できるうえ、DAZN加入時に最初の2カ月間が無料となる特典が用意されるという(ドコモ経由の加入は適用外)。
こうしたメリットを提供することで、DAZNは読売新聞オンラインのユーザー獲得を促進する役目を担う。
さらに、読売側の心を揺さぶったのが、全国の読売新聞販売店を使ってDAZNのプロモーションを行うという提案だ。
DAZNの中村氏は「全国にある販売網が持つセールス力、マンパワーに非常に注目している」と語り、全国各地のスポーツファンの掘り起こしによる加入者獲得への期待をにじませた。
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