「余命半年の妻」と結婚し看取った夫が見た幸せ 25歳でがんで逝った妻との日々は…
2018年3月25日、ひとりの女性の訃報がニュースで伝えられた。山下弘子さん、享年25歳。19歳でがんを患い、余命宣告を受けながらも前向きに生き抜き、ブログや講演会などでがんについて伝え続けた。『アフラック』の保険のCMに嵐の櫻井翔と一緒に出演していた彼女の笑顔を目にした人も多いだろう。
そんな弘子さんをいちばん近くで見守り続けた夫の前田朋己さんが、出会いから別れまでの5年間を綴ったのが『最後の「愛してる」山下弘子、5年間の愛の軌跡』(幻冬舎)だ。
19歳でがんを患った山下弘子さんの物語
「彼女の物語を残したい。その強い思いが本を出版した理由です。書籍という形なら長く残るし、次世代の人たちにがんと共生する生き方や病気と向き合う心構えも伝わる。生前にひろ(弘子さん)が書いたブログを読んだり、講演を聞いた人たちからは、“勇気をもらった” “がんについて勉強になった”といったメッセージをたくさんいただいたので、この本でも病気や困難と闘う勇気をみなさんに届けられればと思っています」
前田さんと出会ったときすでに弘子さんは肝臓がんと診断され、余命半年の宣告を受けていた。そのことを初対面でカミングアウトした弘子さんに対し、前田さんがあっけらかんと「あんまり気にしなくていいんじゃない?」と返したというエピソードが印象的だ。
「初対面で打ち明けたということは、彼女がこれまでの人間関係の中で嫌な思いをしたことがあったんだろうなとピンと来たんです。だから僕は病気を意識せず普通に接したほうがいいだろうと思った。あとで聞いたら、がんであることを告げたら離れていった友人がいたそうです。2度目のデートのとき、ひろが“私ががんであることを意識せず普通に接してくれてうれしかった。今までそういう人はいなかったから”と言ったことをよく覚えています」
弘子さんは手術で1度はがんを切除できたものの再発し、抗がん剤治療や化学療法を継続。しかし、そのかいもなく、骨やリンパ、肺への転移が見つかってしまう。普通なら将来の希望を捨ててしまいたくなる状況だが、2人が選んだのは“結婚”という道だった。