「余命半年の妻」と結婚し看取った夫が見た幸せ

25歳でがんで逝った妻との日々は…

「彼女は結婚にためらいがありました。“もし結婚して私が死んだら、世間の目もあるしトモは再婚しにくいよね。トモの人生の足かせになるのは嫌”と言うんです。

でも僕は、“結婚するなら彼女しかいない”と確信していたので迷いはなかった。だから言ったんです。“確かに肝臓がんで死ぬ確率はひろのほうが高いかもしれない。でも寿命で先に死ぬ確率は年上の僕のほうが高い。いつどこでどう死ぬかは自分でコントロールできないのだから考えたって意味がない。それより、今幸せになることを考えよう”と。彼女と出会ってからの5年間はこれまでの人生でいちばん幸せだったし、結婚したことにも後悔はまったくありません」

とはいえ、病で苦しむ人を見守る家族もつらいものだ。本書にも、弘子さんが薬の副作用に苦しんだり、検査結果の数値を見て落ち込んだりする様子が綴られている。しかし前田さんは、あえて「病状や検査結果に一喜一憂しないこと」を心がけたという。

自分は妻にとって“心のアンカー”

「ひろは前向きな女性ですが、それでも身体に痛みがあればネガティブになるし、検査結果が悪ければ悲しくなる。一方で、検査結果が少しでもよければハッピーになります。ただ、こうした感情のアップダウンが大きいと精神的にしんどい。ひろは病と闘っている本人だから当然ですが、僕まで一気一憂していたら彼女はもっとしんどくなる。だから検査結果がいいときも悪いときも、同じように“ふーん、そうだったんだ”と平静を装いました。

すると彼女も冷静になり、また前向きな気持ちで毎日を送れる。もちろん、本人と一緒に喜んだり悲しんだりすることも大事で、それは彼女のお母さんや親友の役目。僕は彼女の感情が平穏でいられるよう“心のアンカー”の役目を引き受けようと考えました」

こうして2人の軌跡を1冊の本にしたことで、前田さんも改めて弘子さんの強さを感じていると話す。

「彼女は自分の考えを世の中に伝えるのが使命だと考えていました。講演の前日の検査で数値が悪化したり、講演の直後に手術が控えていることもありましたが、彼女はそのつらさを頭の隅っこに追いやって人前に立つ強さがあった。そして彼女の言葉は、多くの人に届きました。

ひろの葬儀に来た男性が、“自分も肝臓がんを患い、自暴自棄になり会社を辞めて治療も拒否していた。しかし、弘子さんの講演を聞いて病気と向き合う覚悟ができた。おかげで治療も成功し、再就職までできた”と涙ながらに語ってくれたのが印象的でした。

これほどの影響を与えた彼女は、人を惹きつける不思議な魅力があったのだと改めて思います。とはいえ、本には2人のケンカの様子まで赤裸々に書いてしまったので、天国のひろは“私のイメージが壊れるじゃない!”と怒ってるかも(笑)。でも僕にとっては、すベてが大切で幸せな思い出なんです」

 

ライターは見た!著者の素顔

前田さんの職業は、兵庫県議会議員。抗がん剤治療の影響で子どもを産めなくなった弘子さんの体験を踏まえ、昨年6月にはがん患者の妊孕性(にんようせい)温存への支援を求める意見書が兵庫県議会で可決され、がん対策の条例化も進行中。「ひろはほかにもがんの治験に関して情報発信したり、がんの治療に貢献した医療関係者や団体を表彰する“キャンサーアワード”を作りたいという夢があった。これらは僕に残された宿題だと思って、積極的に取り組んでいくつもりです」
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