深川で「日本のワイナリー」が生まれた納得理由

「第2のブルックリン」とも言うべき可能性

中本氏は“深川をワインの街に”をキャッチコピーとし、屋上でのブドウづくりのほかにも、さまざまなアイデアを温めているようだ。

最近ワイン好きの間では話題になっているという「オレンジワイン」のスパークリング。2600円。赤ワインの製法でつくった白ワインで、白ブドウを皮ごと発酵させてから醸造する。皮や種の成分が溶け込み、キリッとした味や深み、うっすらとオレンジがかった色合いが生まれる(筆者撮影)

「深川の街には“第2のブルックリン”ともいうべき可能性があります。大手ゼネコンなどが進めている『東京イーストベイ構想』という産学連携プロジェクトがあるのですが、私もその一環として、ワインを通じた地域活性化を目指しています」(中本氏)

ニューヨークの区の1つで、近年、ファッションや文化の先端として挙げられることの多いブルックリン。やはり水辺の街で、作業場や倉庫が多い点でも江東区と似ている。同地を訪ねた中本氏によると、やはり屋上などを活用した野菜づくりや、地産地消の取り組みが活発なのだという。

「ワインの味の8割はブドウが決めるといわれています。そしてそのブドウを育てるのが土壌や気候などの環境。深川でヨーロッパなどのワインの産地と同じ環境をつくり、ブドウを育てるという実験をしたいと思っています。

東京海洋大学と協力し“江戸前海中熟成ワイン”を制作中

またワイナリーのすぐ近くにある東京海洋大学と協力し、私も大学に席を置かせていただいて、ワインを海底に沈めて味の変化を検証する実験をしています。同じような試みは世界的にも国内でも行われていますが、国内では、産学連携というのは初めてではないかと思います」(中本氏)

中本氏が“江戸前海中熟成ワイン”と称するワイン、4月に引き上げて成分分析などを行う予定だそうだ。

素人から始めて、門外漢ならではの発想を事業に生かしてきた同社。企業としては将来的にどのような姿を描いているのか。

「2020年をメドに、上場できるぐらいの企業体質をつくりあげることを目標としています。数字としては、年間売上高10億円ですが、重要なのは企業としての価値を上げることだと思っています。しっかりした財務体質はもちろんですが、企業として社会的使命を持ち、スタッフ一人ひとりが自覚することが必要です。お客様や地域の人、いろいろな方に喜んでいただき、ファンをつくっていきたいと考えています」(中本氏)

現在の同社の規模は社員60名程度。ワイナリー・飲食店として多数のデベロッパーからの引き合いがあるが、とても手が回らないため、断っている状況だそうだ。そこで具体的には、自分のノウハウを生かした都市型ワイナリープロデュース業を展開するほか、ボランタリーチェーンの形で事業を広げていくことを構想している。現在、沖縄などでワイナリーをプロデュース中とのことだ。

確かに、ワインというと、すでに成長を遂げた商品という感じがする。しかし日本ワインとなると話は異なる。選択肢はまだまだあるのだ。切り口を変えれば話題にもなりやすい。同社のような手法はこれまでの伝統的なワインづくりからすれば、異端と呼ばれてしまうかもしれない。しかしワインの新たな魅力を広く知ってもらい、市場を活性化させ、さらに新たなワインづくりを生み出していく可能性も生まれてくるのではないだろうか。

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