深川で「日本のワイナリー」が生まれた納得理由 「第2のブルックリン」とも言うべき可能性
中本氏はワイン醸造に関しては門外漢。12年間、中国でものづくりに関する事業を行っていた中本氏は帰国後、新しく事業を立ち上げることを考えた。その際、「ものづくりにおける原点」であるワインづくりに取り組んでみたいと思ったのだそうだ。
2015年にまずは清澄白河にワインバル「九吾郎ワインテーブル」をオープン。ワインの勉強をしながら、国内のワイナリーを巡って醸造人を探し、2016年、ワイナリーをオープンした。
年間の売上高は2019年1月末時点で3億2000万円。現在、九吾郎ワインテーブルのほか、ワイナリーに付属したワンコインバル、完全予約制レストラン、ワインと発酵食品のセレクトショップを展開している。また2018年4月には世界初の空港内醸造所として伊丹空港にワイナリーとレストランをオープンし、こちらも好調だそうだ。
「都会におけるワイナリー」の可能性に着眼した2つの理由
来年は、まだ発表できないものの、やはり都心の代表的な街にワイナリーを設けるほか、豊洲にワインバルを展開予定で、来年の売上高は5億円を見込んでいるという。
中本氏が「都会におけるワイナリー」という可能性に着眼したのには、2つの理由があった。
「日本ワインは酒類全体の中で0.4%しか飲まれていないので、市場性があるとみました。また、ワイナリーはブドウ畑のそばにあるので、車で行くというのが一般的です。つまり運転する人はワインが飲めない。ワインを楽しみたい人が遠方まで出かけるのではなく、ブドウを都会に連れてきたらいいのではないか、ニーズがあるのではないか、というのが私の発想です」(中本氏)
実際、都会のワイナリーに興味をもって訪れる人は多い。一目で見渡せるぐらいの小ぢんまりしたワイン工場を見学し、試飲するだけで、ちょっとした非日常感が味わえる。
また産地で収穫・翌日に工場で醸造作業を行う2日がかりの「収穫・ワインづくりツアー」も人気だ。味も含めてオリジナルのワインをつくることもできる。こうしたオリジナルワインは、参加したカップルが、自分たちのつくったワインを結婚式の披露宴で供したり、還暦の男性が「赤いちゃんちゃんこ」代わりにオリジナルの赤ワインを配るなど、記念品用途での受注も多いそうだ。
なお、オリジナルワインには特別料金は必要なく、エチケット(ワインのラベル)にかかる印刷費の実費ぐらいだそう。中本氏によると、深川ワイナリーで醸造するワインは高くても2000円台までという価格設定にしているという。
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