AKBオタは、なぜリアルな恋愛ができない? 宮台真司が語る、絶望の時代を生き抜く恋愛学

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 AKBオタクはどうして女を幸せにできないか?

――女を〈物格化〉する男があまりに多すぎるので、彼らが変わらなければならない理由がピンとこないのですが?

〈物格化〉と〈母への恨み〉を結合させた「自分に似合いの女」を探す男は女を幸せにできません。理由は3つ。

第一は、女子の〈尊厳〉つまり〈入れ替え不能な自己価値〉への信念が脅かされるから。第二は、良い性交ができないから。良い性交には〈変性意識状態〉が不可欠です。〈物格化〉と〈母への恨み〉を結合させた男は〈変性意識状態〉から見放されます。

〈変性意識状態〉とは、通常意識状態における自己防衛機制が解除された〈あり得ないことがあり得る状態〉です。海底散歩と同様、1時間だと思ったら3時間経っていたという具合に時間の見当識を失います。

スワッピング取材で多数の男を観察してきた経験から言うと、女を〈物格化〉する傾きと〈変性意識状態〉から見放される傾きは確実に結合しています。

性交で〈変性意識状態〉に入るには〈委ね〉が必須。〈委ね〉は〈相互触発〉なので双方の〈委ね〉が不可欠です。二人が一挙に全き〈委ね〉に入るのは困難で、経験的にはエアロビと同じく10分程かかります。男が少し委ね、それで女が少し委ね、それでさらに男が……と〈相互触発〉する。〈委ね〉に障害があると〈変性意識状態〉に入れず、性交は失敗するのです。

〈母への恨み〉を抱えた男は操縦欲求を持ち、女が操縦不能にならないかと身構えています。通常意識状態での数多の齟齬はあれ、最後は〈変性意識状態〉で自他未分状態になれると信頼していないのです。身構えがもたらす〈固さ〉が〈委ね〉を障害するので、女を強烈なエクスタシーを伴う性交へと導けないのです。

こうして〈物格化〉と〈母への恨み〉と〈変性意識状態への入りにくさ〉が三位一体である理由をお分かりいただけたと思います。この解きほぐしは困難です。と言ってもピンとこない方がいます。だから困難の理由を述べます。〈共依存〉です。この種の男は、女に母親役を期待するがゆえに必ず〈君が見放さないでくれたら僕は変われる〉とホザキます。

こう期待された女は多くの場合〈あなたが変わるには私が必要なのだ〉とウヌボレます。こうして、〈依存的なホザキ男〉と〈依存的なウヌボレ女〉の〈共依存〉が生まれます。男が変われないことで〈共依存〉の定常性が維持でき、不幸にせよ関係が維持されるので、男が変わることは永久にありません。それなのにこれに耐える女は病んだメンヘラーです。

この袋小路を自覚できない思考停止の男たちが、ナンパ・クラスタ周辺でミソジニーのイヤな匂いを漂わせています。『「絶望の時代」の希望の恋愛学』で紹介した僕らの〈素敵化ワークショップ〉は彼らの腐臭が漂うナンパ講座と違って、先に述べた〈本人の強力な自覚とカウンセリング〉の代替機能を果します。

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