AKBオタは、なぜリアルな恋愛ができない? 宮台真司が語る、絶望の時代を生き抜く恋愛学
入れ替え不可能な人間関係をつくるたったひとつの方法
――強力な自覚とカウンセリングと同等の機能を果たすワークショップとはどんなものでしょう? 〈入れ替え可能〉になった人間関係を〈入れ替え不可能〉なものに変化させるために、ワークショップに参加できない人はどんなことをすればいいのでしょう。
まず、今の人間関係の延長上には、そのような変化は訪れません。〈共依存〉の例を挙げましたが、人間関係にも自己意識にも、現状を定常化させるようなホメオスタシス(恒常性維持機能)が働くからです。だから〈外力〉が必要です。それが、強烈な動機を伴わずには耐えられないカウンセリングやワークショップです。一般には〈旅の勧め〉になります。
〈依存的なホザキ男〉は、〈君が見放さないでくれたら僕は変われる〉とホザクのをやめ、〈一年間の旅をした後に再会してくれ、それまでに僕は変わる〉と今宣言すべきです。
〈依存的なウヌボレ女〉は、〈あなたが変わるには私が必要なのだ〉とウヌボレルのをやめ、〈私がいるからあなたは変われない、だから私は旅に出る〉と今宣言すべきです。
――宮台さんたちのワークショップは「ナンパ」を手掛かりにしますが、なぜですか?
正確には〈悪いナンパ〉と区別された〈良いナンパ〉へと近づくプロセスを体感することを通じて、今回紹介したような人間関係から自己意識まで含めて数学の公理系のように組み上がった本質を理解するだけでなく、公理系が導く定理に抗わずに問題を自力で解決する糸口をつかむことができるからです。理解に留まると言い訳が始まるだけでどうにもなりません。
同じ教室で講義を受けている女子に声をかける。自分が並ぶイベントの行列に並ぶ女子に声をかける。同じ時間に同じ場所にいるストリートの女子に声をかける。見ず知らずの相手に見えても必ず共通の前提が見つかります。その意味で〈完全な見ず知らず〉はあり得ません。それを理解するだけで都会は〈匿名者の群れ〉ではなくなります。まず毎日が変わる。
――30代を過ぎて、ナンパはリスクが高すぎる……という人もいると思うのですが?
強力なカウンセリングもワークショップも旅も〈外力〉を呼び込むものだから、どのみちリスクを伴います。それがイヤなら、永久に今の不毛な生活にしがみついてください。
ここで述べたように、ナンパでなくても、今のパートナーとの停滞した関係を動かすだけで〈外力〉が必要です。別の男や女の存在を利用することもあり得ますが、これも高度なリスクです。
僕は22歳のときの失恋と、28歳のときの究極の失恋をきっかけに、10年以上の間、数百人の女性のとっかえひっかえを繰り返す「ナンパサイボーグ」になりました。
それは援助交際のフィールドワークにこそ役立ちましたが、精神状態は地獄でした。当時は喜怒哀楽が鈍くなっていて、世界が輝いていた幼少期を思い出しては絶望して涙にくれていました。
そんな苦い経験を経て、何とか自分を変えようと悪戦苦闘していたときに、今の妻と出会って自己回復に成功し、かつてが地獄だったことや、そこから帰還した僕が負う責務を、改めて自覚しました。僕らの本を手に一歩を踏み出してください。本を手放せたとき、そこにはAKBオタクたちは知り得ない、真に充実した人間関係と性愛が待っています。
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