トランプ大統領が執務室の肖像画を変えた「謎」 なぜいつのまにかリンカーンになったのか
余談だが、現在のアメリカの保守とリベラルの源流をたどれば、まずはイギリスの植民地経営の一環でバージニア会社がウイリアムズタウンに奴隷を伴って入植した流れが(ディズニーの映画にもなった酋長の娘「ポカホンタス」が参考になる)、プランテーション農園に拡大していったのが今の南部の白人保守層の源流だ(「風と共に去りぬ」が参考になる)。
一方で、メイフラワー号で新天地を求めてきた清教徒の流れが現在の北東部を中心としたリベラル思想の源流とされる。そして、南北戦争では、アメリカから綿花を輸入したグローバリスト国家の英仏は南軍の味方をし、北軍を援助したのはロシアだった。リンカーンは、欧州の金融カルテルの影響を嫌い、国家紙幣発行(グリーンバック)を発行。負けた南軍の人々に対しホームステッド法(5年以上開拓に従事することを条件に無償で土地を提供して中西部へ移住させる)など、国内の産業を保護した。
ならば、欧州のグローバリストが嫌いでロシアのウラジミール・プーチン大統領と仲良しのトランプ大統領は、この点ではリンカーンと重なる。
だからこそ、リンカーンのように大統領令で国境の壁建設を推進したいトランプ大統領に対し、中間選挙後、バーニー・サンダース議員やAOC(アレクサンドリア・オカシオコルテス)議員などの進歩主義者との内部分裂を抱えた民主党は必死だ。そして議員たちがワシントンDCを舞台に反トランプ劇場を繰り広げる一方、全国組織としては、水面下では全米を舞台にしたたかな戦略も展開している。
「大統領の決め方」の大転換狙う民主党
その一つが「ポピュラーボートイニシアテイブ」(NPVIC=全国一般投票州際協定)と呼ばれるものである。これは、カリフォルニア、イリノイ、NYなどのリベラル州やワシントンDCを中心に、大統領選で各州やDCの勝者が誰かにかかわらず、ポピュラーボート(一般投票)で多数をとった候補者にその州の選挙人を自動的に与えるという協定。参加するには当然州民の合意が必要だが、直近はコロラドがこのNPVICを宣言した16番目の州になった。
すでに合意した州の選挙人の合計は170余りだ。今後続々とNPVICについての賛否が各州で出るとして、NPVIC参加した州の選挙人の合計が過半数の270に達すれば、協定の効力がキックインする(逆に言えば270に達しなければ効力はない)。かつては州行政、地方行政は共和党優位が優位だったが、2018年の中間選挙で共和党の優位性は崩れてきており、地方行政でも民主党が優位になるのは時間の問題だ。
NPVICは、合衆国憲法が大統領選挙における州の勝者の選定方法を州に一任していることに付け込んだ民主党の大戦略だが、この協定で民主党候補が有利になるのはいうまでもない。なぜなら2000年以降、大統領選で共和党候補がポピュラーボートで上回ったのは2004年だけ。今後もヒスパニック系の有権者が増加するアメリカでは、共和党が保守である限りこの制度の元で大統領を出すのは事実上ほぼ不可能になる。よって協定が成立すれば、共和党は「協定は連邦国家の意義と建国の精神に反する憲法違反」という理由で最高裁に持ち込むのは必定だ。その時は相当な混乱が予想される。
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