トランプ大統領が執務室の肖像画を変えた「謎」 なぜいつのまにかリンカーンになったのか

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そしてもっと混乱になりそうなのは、大統領選の本戦が、独立系を含めた3人以上の候補者で争われ、結果的に選挙人獲得で誰も過半数に届かないケースだ。

2020年の大統領選は、下院が決める事態に?

その場合は、たとえトランプ大統領が選挙人の獲得でトップになったとしても、下院が各州1票の投票で大統領を決めることになる(上院は副大統領を決める)。現在、下院は総数では民主党が上回っているが、州別の優位性をみると共和党が過半数を超える26州で優勢だ。だが中身は僅差であり、不祥事などで途中議員が辞職し、民主党議員になると、全体の構図が変わる。さらに、共和党系から独立候補が出ると、トランプ票が奪われる可能性があり、こちらの展開も予断を許さない。

そういえば、相場で有名な債券王のジェフリー・ガンラック氏は、先のインタビューで「2020年の大統領選は4人の候補者の争いになるかもしれない」と述べており、まさに大混乱が予想される。いずれにしても、このケースは憲法で規定され、過去に実例もあるためトランプ大統領も文句は言えない(実例はトランプ大統領が肖像画を掲げるジャクソンがJ・Q・アダムズ(6代目)に負けたケースである)。 

さて、最後にもう一度相場のイメージに戻ろう。今後のカギはやはりFEDの動向だ。FEDはタカ派をいったん止めたとはいえ、関係者は縮小させてきたバランスシートの最終目標に直接言及はしていない。だが先の議会証言で、別の角度からの質問に対し、ジェローム・パウエルFRB議長は、日銀の当座預金に当たるリザーブは「1兆ドル前後が望ましい」と答えた。リザーブはバランシート削減に準じて減ってきており、現在1.4兆ドルが1兆ドルになるには、現在4兆ドル弱のバランスシートが3.6兆ドル程度になれば達成される計算だ。

ならば、今のペースなら、第2四半期にはFEDのバランスシート縮小は終わる。これは株にも債券にも好材料である。ただし、もし米中貿易協議が妥結すれば、FEDが懸念した悪材料の一つが消える。つまり、バランスシートの削減は終わっても、利上げの復活はありうると言うことである。

いずれにしても、今の金融市場は実態経済よりも流動性過多の状態で、値動きは人間ではなくAIが先導している。ならば新高値を更新した翌月に、昨年の安値を切るような荒っぽい値動きもありうるということだ。2019年の1・2月の株の上昇幅は1987年以来だというが、同年の株式市場がどんな終わり方をしたのか。中央銀行の量的緩和の時代に株式を始めた若い人たちは、今一度確認しておいた方がいいかもしれない。

滝澤 伯文 CME・CBOTストラテジスト

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たきざわ おさふみ / Osahumi Takizawa

アメリカ・シカゴ在住。1988年日興證券入社後、1993年日興インターナショナルシカゴ、1997年日興インターナショナルNY本社勤務。その後、1999年米国CITIグループNY本社へ転籍。傘下のソロモンスミスバーニーシカゴに転勤。CBOTの会員に復帰。2002年CITI退社後、オコーナー社、FORTIS(現在のABNアムロ)、HFT最大手Knight証券を経て現在はWEDBUSH傘下で、米国の金融市場、ならびに米国の政治動向を日系大手金融機関と大手ヘッジファンドに提供。市場商品での専門は、米国債先物・オプション 米株先物 VIXなど、シカゴの先物市場商品全般。

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