死産した子と最後を過ごせる「ゆりかご」の存在 赤ちゃんの遺体を保全する「カドルコット」
子どもの死というのは非常につらいもので、通常は嘆き悲しむ親にはたくさんの支援の手が差し伸べられる。しかし、赤ちゃんが死産だったり、生まれてすぐに死亡したりした場合、親たちが病院で孤立することがよくある。慰めとなるものがほとんどなく、赤ちゃん(多胎児のこともある)にお別れを言う機会はないに等しい。
「カドルコット(保冷ゆりかご)」は冷却機能のついたベビーベッドで、亡くなった赤ちゃんの遺体を数日間安置することができ、わが子とつながりを持つ機会を親たちに与える装置だ。子どもに愛を注ぎ、抱っこし、写真を撮り、一緒に自宅に戻って散歩に出かけることもでき、親たちは生涯忘れることのない思い出を作ることができる。
抱っこをさせてもらえない
イリノイ州ピングリー・グローブに暮らすクリス・フリッカーと妻のエミリーは、サイラスとシビルという双子を生後90分で亡くした。カドルコットに大きく助けられた夫妻は先月、自分たちと同じ境遇の親たちのために役立ててもらおうと、同州マクヘンリーにあるセンテグラ・ノースウエスタン病院にカドルコットを1台寄付した。
同病院の産科の看護師、メアリー・ケイ・ホーニーは、自身の家族の経験からカドルコットの寄付がいかに価値あるものかを実感している。「私の母は初めての子を死産した。母はその子と対面することができず、深い悲しみからうつとアルコール依存症になった」。
ミシガン州が行った2016年の研究では、赤ちゃんが死産するか産後すぐに死亡した女性377人と赤ちゃんが無事に生まれた女性232人を比較したところ、赤ちゃんを亡くした女性はうつ状態になる可能性が4倍、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を発症する可能性が7倍にもなることがわかった。女性たちの精神的苦痛は少なくとも9カ月間、深刻な状態が続いた。
ミシガン大学のキャサリン・J・ゴールド博士が率いたこの研究では、赤ちゃんを亡くした女性のうち、赤ちゃんと対面する機会を与えられなかった女性が18人、赤ちゃんを抱っこしなかった女性が36人、抱っこすることはできないと言われた女性が34人に上った。
クリス・フリッカーは、カドルコットのおかげで看護師から「好きなだけ子どもたちと一緒に過ごしていいと言われた」と話す。双子は妊娠23週未満で生まれ、生まれたときの体重は2人とも480グラムほどだった。