東京五輪後に「全国住み放題」が広がる理由 空家活用の新モデル、仕掛け人が描く青写真

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それでも都会の人からは、月4万円で住み放題というと「安い」といわれる。それは毎週末2日、月8日間利用した場合、1泊約5000円で、光熱費や家具もついて、コリビングの住民や地元住民とのつながりも楽しめることに割安感を感じていただけるからだと思う。その魅力をどれだけ広めていけるか。

一方、地方の人にとって月4万円というと、空き家1棟を借りられる値段。全国住み放題といっても、1部屋の賃料としては実は高い。だからこそ、第1の生活拠点として、自分の家としても使ってもらいたい。

――定期的に全国を移動するには、やはり各拠点に仕事があったほうがいいはずです。しかし、そういう人はフリーランスのエンジニアやデザイナーなど、テレワークが可能な一部の人に限られるとの見方もあります。利用者は100万人にまで広がりますか。

全国住み放題というスタイルは、エンジニアなど一部の職種の人だけでなく、多くの会社員にとっても身近なスタイルになると考えている。それは2020年の東京五輪以降、日本経済が変化するだろうからだ。

五輪後、住み放題はもっと身近に

2020年以降、日本経済は今のような好景気を保てないだろう。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の技術が普及する時代、どれだけの企業が週5日間勤務する今の正社員数を抱え続けられるのか。

佐別当隆志(さべっとう たかし)/2000年ガイアックス入社。広報・事業開発を経て、2016年1月、一般社団法人シェアリングエコノミー協会設立、事務局長に就任。2017年3月、「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」に任命される。2018年11月、アドレス設立(撮影:風間仁一郎)

正社員を雇用し続けるのがしんどくなった企業は、組織をなるべくスリム化したり、正社員の仕事を業務委託に切り替えたり、社員に副業を推奨したりするところが増えるはず。一方、地方企業の中には人手不足が深刻化していく企業も多いはずだ。すると、都会で働いている人が地方で活躍するケースが増えるのではないだろうか。

そうなると、週3日は都会で働き、残り2日を地方の中小企業で働くような多様な働き方が増える。そのとき、全国住み放題は今よりももっと多くの人に身近になっているはずだ。

今、アドレスに興味を持ってくれている人は20~30代が7割。ただ将来は40~50代の利用者も増えてほしい。そのため、個人会員の配偶者と1親等の家族の利用は無料とした。国内でも家族で旅行すると2泊3日で10万円近くもの高額な旅行費がかかる。だからこそ、月4万円で全国のいろんな場所に滞在できるサービスがあったら、安いと感じてくれる人は多いと思っている。

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