市況悪化はまだ2回表、回復に4、5年かかる--宮原耕治・日本郵船社長

環境のためにすぐにできることは減速運航です。私が入社した頃は18ノット(時速約33キロメートル)が主流でしたが今では24ノット(同44キロメートル)が標準です。これからは、安い原油を前提とした速度ではやっていけません。1割の減速で3割の燃料が減らせます。2、3年前から減速運航を励行しています。

今までは高速運航を前提に逆三角形のトンガリ型の船体でしたが、減速運航ならばおわん型にすることができ、より多くの荷物を運べる分、積載量当たりの使用燃料も減らせます。その分、二酸化炭素など温暖化ガスの排出量も減るわけです。

さらにいえば、現在使っているディーゼルエンジンはエネルギー効率が高いとはいえ、まだ50%のエネルギーを排熱などで捨てています。排熱を再利用する、ということになれば、温暖化ガスはさらに減らせます。日本郵船は向こう6年間で700億円の環境投資を計画していますが、これは不況が長引いても変えるつもりはありません。

日本郵船の輸送は6割が第3国間です。日本国内で温暖化ガスを排出しているのは、残る4割の日本発や日本着の船のうち、港に停泊している間と沿岸にいる間だけです。国別規制にそぐわないということで京都議定書から除外されていますが、海運会社は、自主的に温暖化ガスを抑制するべきだと考えています。

-- 09年は政治のリーダーシップが問われる年です。日本の政治に何を期待しますか。

景気刺激策を迅速に打つべきなのはもちろんですが、そのほかに二つあります。一つは、企業が日本でもっと元気よく活動していくための諸施策。税制改正のほか、投資へのインセンティブをつけることです。環境技術投資に思い切った補助金を出してもいいのではないでしょうか。

もう一つは若年層の雇用対策。このために農業にスポットライトを当てるべきです。今のままでは高齢化が進み、田畑は荒れ、食料自給率は下がる一方です。農業の従事者は政府・与党の大票田なのでなかなか踏み込めないのかもしれませんが、農業に若者が明るい展望を持てるようにするべきです。日本の政治はマチュア(成熟)していません。党派を超えて迅速に国のコンセンサスを形成できる成熟した政治が必要です。党派根性ばかりではいけません。

-- 日本郵船にとっての雇用面での課題は。

日本郵船単体では1000人くらいしかいませんが、全世界では3万2000人近く雇用しています。マネジメント層では外国人の優秀な管理職の育成が課題になっています。もう一つの課題は日本人船員の育成です。2万人いる外国人船員の教育・訓練のためです。船員を教育する能力は日本人船員が世界一です。日本人の船員は現在600人しかいませんが、少しずつ増やす計画です。

3年前から一般大学卒の船長・機関長の養成を始めました。06年入社の採用では3人、07年は5人、08年は8人の一般大学の新卒を採用しました。08年の採用では400人近くの応募がありました。その中には早稲田大や慶応大、一橋大、東大、同志社大の学生がいました。

一般大学卒の場合、受験資格の取得のために商船系大卒者よりも2年、育成にかかります。座学が1年、もう1年が乗船研修です。それでようやく3等航海士の受験資格ができます。「外海に出て2時間もするとメールはつながらない。だから今の学生は船員になりたがらない」なんて言われますが、どっこいそうじゃない。今の若い人のチャレンジ精神はものすごいですよ。

(鈴木雅幸、山田雄一郎 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

みやはら・こうじ
1945年岡山県生まれ。70年東大法学部卒、日本郵船入社。83年ロンドン支店勤務。96年経営企画グループ長。2000年6月取締役。02年常務、03年専務、04年社長。09年4月に会長就任予定。

関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
JR北海道<br>「組合介入」を許した経営

国鉄時代、管理職を組合員が「吊るし上げる」場となり、職場を荒廃させた「現場協議」。これをひそかに復活させていたJR北海道。元社長自殺の引き金になった可能性がある。