短編ドキュメンタリー『ピリオド-羽ばたく女性たち-』はライカ・ゼタブチ監督の作品。インドを舞台に生理用ナプキンを巡って、経済的自立に向かう女性たちの姿を追ったものです。
日本でも公開されたインド映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』とベースとなる話は同じですが、「企画の関連性はない」とNetflixは話しています。いずれにしろ、題材に魅力があるということ。『ピリオド』はドキュメンタリー映画ですから、女性の生理がタブー視されているインドのある村の実態もわかる作品で、26分の中にその理由や女性たち自ら進んでいく姿が収められています。
Netflixがドキュメンタリー映画でオスカーを受賞したのはこれが初ではありません。まずは『ホワイト・ヘルメット:シリアの民間防衛隊』が2017年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞を、『イカロス』が2018年の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞しました。そして、今年は『ピリオド』が短編ドキュメンタリー映画賞を受賞し、3年連続でドキュメンタリー部門を勝ち取っています。
映画スタジオとしての監督賞受賞の価値とは?
そして、ドキュメンタリー以外では今年初めて受賞に至りました。2017年のアカデミー賞では、映画『最後の追跡』が作品・助演男優賞など4部門でNetflix映画としては初のノミネートを果たすも、受賞を逃します。映像ストリーミングサービス系スタジオの中では、Amazonスタジオが先に威力を示すオスカーを手にしました。同年のアカデミー賞でAmazonスタジオの映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が脚本賞と主演を務めたケイシー・アフレックが主演男優賞を受賞しています。
またその年のカンヌ映画祭最高賞のパルムドール部門にNetflixオリジナルのポン・ジュノ監督の映画『オクジャ』と、ノア・バームバック監督の映画『The Meyerowitz Stories』の2作品を出品したときは、いわゆるNetflix論争を巻き起こしもしました。原因はフランスの映画業界のエコシステムやカンヌの出品条件に見合わなかったから。映画スタジオとしては厳しい道のりから始まった印象も受けました。
そんな過程を経て、今回、最も価値のある作品賞は逃すも、監督賞受賞の価値は大きいでしょう。その理由は映画スタジオとしての立ち位置の足固めができることに尽きます。したたかにドラマやドキュメンタリー作品でブランド構築を進めてきたNetflixが、映画スタジオとしての顔を持つことはハリウッドを制することになるからです。
Netflixのこれまでの躍進劇を振り返ることで、さらに理解が深まります。Netflixが製作スタジオとしてのポジショニングをはじめに確保したのはデヴィッド・フィンチャー制作総指揮・監督のドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」でした。ネット配信で初公開されたドラマシリーズとしては史上初のプライムタイム・エミー賞に同作がノミネートされたのが2013年。その頃から一気に攻めていきました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら