「スーパーカブC125」、妥協なき造り込みの裏側 求めたのはカブとしての「伝統」と「進化」

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――メーターも面白いですよね。

たとえばデジタルメーターはリーダー(勝田さん)のこだわりでもあります。デジタルとアナログを両方入れていて、デジタルが手前、タコメーターを奥に入れて、メーターの厚みもある。それをハンドルにどう一体化させるかというのは課題でした。

本田技術研究所 二輪R&Dセンターの松本安弘研究員(東洋経済オンライン編集部撮影)

今までにないデザインであり、シンプル、かつハンドルよりも低いメーターにしなければいけない、立体感を出したいけれどメーターが出っ張りすぎないようにする必要もありました。

そこでハンドルをできるだけ下げてメーターの場所を確保しました。このハンドルのところはテーパーパイプを使っています。見えないところですが、根元を強くすることができるので採用しました。

開発メンバーもタイの生産スタッフも「カブはかくあるべき」というのがそれぞれの頭の中にはあります。その中でC125としてのメッセージ(2輪に触れていなかった人にも触れてほしい)や、ぶれずにつくり続けてきたホンダの信念・総力を1つの目標に向かって努力した結果でもあるんです。

私たち開発陣はボルト1本にしても全部こだわりました。そして、ホンダの代表であるカブの開発を担うというのは私たちにはすごいプレッシャーでした。四六時中いつもカブの話をしていました。

足回りやミッションについてもこだわりが

――足回りについてもフロントフォークのストロークを100mm、リアは84mmとストロークアップされていますよね。この狙いについて教えてください。

同じ排気量で従来のモデルとの比較で言うとタイで売っている現地向けの125ccのカブと比べて10ミリずつストロークを長くしています。沈み込みでいえば50%をきるくらいのセッティングになっています。

C125については、1人乗りの比率がより多くなると想定しました。たとえば、快適に乗っていただけるように、路面の継ぎ目を走行する時のショックを減らしたいという狙いがあります。

――ミッションも動きがよかったですね。カブといえば、ガシャガシャという音を立ててギアをチェンジする印象が強いですが、今回のC125はガシャ感も軽減されていました。

元来、カブは独特の機構を使っていまして、このC125はガシャ感をもう少し軽減できないかと試行錯誤しました。2009年以降、現行のカブに搭載されているのは発進と変速それぞれに独立クラッチ機構がある2段クラッチシステムです。

クランクシャフトからの出力は回転エネルギーによる遠心クラッチとしてシューがアウターと接続されるシンプルな構造。主に発進時、エンジン回転を上げる事で作動します。

また、ミッション側としては大型バイク同様にクラッチバスケットにクラッチプレッシャープレートとフリクションディスクがあり、通常はクラッチレバーでその接続を行いますが、カブはリフターという部品がカギになりまして、シフトペダルを動かしてシフト操作を行うタイミングでリフターが作動しプレートが動きクラッチを切ってまた繋がることでギアチェンジができます。この2段クラッチによりスムーズな発進となめらかな変速ができています。

二段クラッチシステムの図版(イラスト:Honda提供)
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