「スーパーカブC125」、妥協なき造り込みの裏側 求めたのはカブとしての「伝統」と「進化」

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――次にデザインについてお伺いします。私はバイクにとってデザインは性能・機能の一部だと思っていて、いいバイクがあると作品と呼ぶようにしています。60年たってもカブのデザインは素晴らしいと思いますが、今回のデザイン設計の難しさについてはどうお考えでしょうか?

東南アジアを中心とした発展途上国だけでなく、ドイツなどの先進国を含めたグローバルな世界で受け入れられるように設計をしました。特に「上質感」をカブで表現するというのが難しかったですね。そもそも、カブのイメージや歴史からして上質感というのは相反する部分があります。タフネス・頑丈さを求められてきましたので。

しかし、デザイナーから1枚のスケッチが上がってきて、それを見たら、スーパーカブの雰囲気がありつつ、上質感を持ち合わせていたものだったんですね。これだったらいけるのではないかと思い、最初の一歩を踏み出したきっかけになりました。これは開発メンバーだけでなく、カブにかかわる人が、これだったらカブだね、だけど上質だねというのがわかるものだったわけです。

スーパーカブC125のファイナルスケッチ(写真:Honda提供)

C125で採用となったアルミキャストホイール

――C100のときから続けてきたスポークホイールをやめてキャストホイールを採用しました。スポークホイールはカブとして守っていくものだと思いましたし、初代からの承継で考えると思い切ったチャレンジでした。このアルミキャストホイールは中空切削加工もしてあり、まさに1000ccクラスのマシンのよう。これも上質感を実現させるためだったのでしょうか?

今までのカブからの進化を考える中で、ホイールをどうするかについては議論を重ねたところでした。これまでのスポークでいくのかスポークの本数を増やすのか、ただスポークホイールではパンクの不安もあります。今回採用したキャストホイールでは軽快な見た目を実現し、チューブレスタイヤも採用をするに至りました。

本田技術研究所 二輪R&Dセンターの勝田淳平研究員(東洋経済オンライン編集部撮影)

このホイールでいえば、僕たちが求めていた上質感というのは”使っていただく方の心の余裕”です。

どういうデザインをするのかというふうに考えてみたときにキャストホイールを採用する、60年守ってきたスポークを変え、さらに手を加え、仕様にもこだわることができました。

コストや全体のバランスという課題もありました。最初C125を東京モーターショー2017に出展したときはスポークでなくていけるのかという感じもありましたが、実際に市販用の完成品ができたとき、その仕上がりが我々の想像を超えてきた。近年まれに見るいいホイールだという話になり、関連会社の方々も賛同してくれたんです。

――心の余裕というのは、ほかにはどういう点がありますか?

50㏄のカブと違って、このC125は走行時の不安感もなくし、お客さんの走行時の余裕をもたらしてくれたと思います。デジタルメーターにしても主要装備にしてもユーティリティ性を高めることができました。

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