JR「ダイヤ改正」から読み解く各社の損得勘定 列車本数の増減は、収支をどう変化させるか

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前回のダイヤ改正で九州新幹線を含めて多数の列車が削減されて沿線の関係者を心配させたJR九州も、今回のダイヤ改正では落ち着きを取り戻したと言ってよい。九州新幹線の「みずほ」2本、そして日豊線と吉都線とで普通列車が1本ずつ計4本新設されたことにより、JR九州の年間の営業収益増加額は5億3384万円と見込まれる。

なかでも喜ばしい話題は吉都線での普通列車の新設であろう。都城21時45分発、吉松23時14分着の普通列車は2018年3月17日のダイヤ改正でいったん廃止された後、臨時列車として復帰を遂げ、今回のダイヤ改正で定期列車として本格的に運転を再開する。2017年度の平均通過数量(旅客輸送密度)が474人日キロと、JR九州中最小の吉都線ながら、さすがにこの時間帯に運転される最終列車は必要であったのであろう。

JR貨物はコンテナ車の両数に注目

JR貨物は、東京貨物ターミナル―神戸貨物ターミナル間に運転されているコンテナ列車2本を福岡貨物ターミナルまで延長し、名古屋南貨物―熊本間に臨時のコンテナ列車2本を今回のダイヤ改正で新設する。また、東京―広島、金沢―岡山、相模―広島の各貨物ターミナル間に運転されるコンテナ列車に対して延べ7両の車両が新たに連結となるという。以上を合わせた年間の営業収益の増加額は13億7339万円と試算された。

特筆されるのは、いま挙げた運転区間の延長と列車中の車両の増加によって必要となるコンテナ車の両数は増えるものの、今回のダイヤ改正に向けてはコンテナ車の新製が予定されていないという点だ。2018年3月17日のダイヤ改正で442両のコンテナ車を新たに造ったので必要ないと判断されたのであろう。

なお、いま挙げた442両のコンテナ車は輸送力の増強用というよりは老朽化したコンテナ車の置き換えという意味合いが強い。現実にJR貨物のコンテナ車の両数は2016年3月31日現在で7243両であったところ、2017年3月31日現在では7203両へと40両減った。

そのような中での輸送力の増強は、JR貨物が2015年から本格的に運用を開始した貨車運用管理システム(CCOMAS:Container Car Operation MAnagement System)による効果が大きい。CCOMASは検査施設の作業状況も管理しているため、検査修繕能力に余力があれば、検査期限までまだ余裕のあるコンテナ車も検査に入れるように指示を出す。

CCOMASによって検査指定駅と呼ばれる全国のコンテナ取り扱い駅中36駅で行われているコンテナ車の検査入場のための捕捉作業が合理化された。この結果、検査指定駅では検査時期が近づいたコンテナ車を計画的に編成から抜き取ることができるようになり、予備として用意しておかなければならないコンテナ車の両数を減らせたという。予備車の減少が今回の輸送力増強に貢献したことは間違いない。

ことによると所有するコンテナ車の両数が7000両以下となったとしてもJR貨物は現状の輸送規模を維持できるか、または輸送力の増強を果たせるのかもしれない。

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