JR「ダイヤ改正」から読み解く各社の損得勘定 列車本数の増減は、収支をどう変化させるか

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おおさか東線の新大阪―放出間11.1kmが新規に開業することもあり、JR西日本には290本もの列車が新設となる。年間の営業収益増加額は58億4533万円とJR各社中最大と見込まれ、年間の営業収支改善額の見通しも60億4182万円とJR東日本に次ぐ数値が算出された。

平日には142本、土休日には140本の列車がそれぞれ新大阪―放出間に新たに運転されることから、列車キロは平日で1日1562km、2019年度を通して38万1128km、休日で1日1540km、2019年度を通して18万7880km、合わせて56万9008km増えることとなる。他方、今回のダイヤ改正ではおおさか東線向けに新製された電車が投入される計画は立てられていない。

「JR西日本グループ中期経営計画2017」によれば、同社は2016年度から2018年度にかけて大阪環状線に168両の323系電車を新製して投入するのだという。おおさか東線の新規開業にあたっては大阪環状線から捻出された201系電車で対応することはほぼ確実だ。

JR四国には明るい話題も

牟岐線の徳島―阿南間に普通列車を8本増発することにより、JR四国は年間で営業収益が8145万円増える見通しとなった。これまでJR四国というと列車の増発は特急列車にほぼ限定され、普通列車それも地方交通線では削減される一方であったため、明るい話題と言えるであろう。

廃止される列車は児島―観音寺・琴平間に運転されている本四備讃線経由の普通列車4本だ。この結果、JR四国の本四備讃線である児島―宇多津間で定期的に運転される旅客列車は特急列車と快速「マリンライナー」に統一される。年間で予想される営業費用の減少額は合わせて1億1257万円だ。従来から岡山―観音寺・琴平間の普通列車は中途半端な存在であったから、今回の廃止はJR四国にとってもよい結果をもたらすであろう。

営業収支の改善とは直線関係しないと考えたために触れなかった点を補足したい。今回のダイヤ改正で、岡山―松山間の「しおかぜ21号」と高松―松山間の「いしづち21号」とが併結となる駅が従来の宇多津駅から多度津駅へと変更されるという。JR四国によれば「岡山・高松方面から丸亀・多度津駅へご利用されるお客様の速達性・利便性向上を図ります」とあるが、ならばほかにも同様のパターンで宇多津駅で併結されている「しおかぜ」「いしづち」も多度津駅での併結に改めてほしいものだ。

どうやら徳島発16時46分発、高松17時47分発、宇多津18時10分着の岡山行き「うずしお22号」が「いしづち21号」と接近して運転されているのを解消するために、「いしづち21号」の運転時刻は後に送られたのだと推測される。「うずしお22号」はご丁寧にも宇多津駅で高知発の「南風22号」と併結を行っているため、宇多津駅の構内では作業が錯綜するうえ、4本の特急列車のうち、どれか1本でも遅れると影響が広範囲に及ぶ。今回の併結駅の変更はJR四国にとってもメリットが大きい。

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