JR「ダイヤ改正」から読み解く各社の損得勘定 列車本数の増減は、収支をどう変化させるか
路線の状況や利用動向といった個々に考慮すべき要素は多いが、本稿では単純化して、列車本数の増、車両の増によって得られる営業収益、列車本数の減、車両の減によって得られる営業費用の改善額に着目して、各社が得られる最大の収益改善効果を試算した。
なお、営業収益や営業費用を求めるに当たり、国土交通省鉄道局監修の「平成27年度 鉄道統計年報」を参照している。営業収益は旅客運輸収入または貨物運輸収入とし、営業費用は列車や車両に直接関係する車両保存費、運転費、運輸費(駅などの経費)とした。
JR北海道は2億8000万円の収支改善
列車を16本増やすことにより、JR北海道の営業収益は年間1億0646万円の増加が見込まれる。一方で、石勝線の新夕張―夕張間の10本を含めた15本の列車を廃止とすることによって予想される営業費用の減少分は年間1億7429万円だ。営業収益の増と営業費用の減とを合わせると、2億8074万円分の営業収支が改善される見込みだ。
JR北海道のダイヤ改正で注目されるのは札沼線での列車の増発であろう。札幌―あいの里公園間に2本、札幌―石狩当別間に1本それぞれ増発されるほか、従来、札幌―あいの里公園間の運転であった2本、札幌―石狩当別間の運転であった10本は札幌―北海道医療大学間の運転へと延長される。
札沼線での輸送力増強は733系電車の新製によるたまものであろう。JR北海道は2018年度に2015年度以来久しぶりに札幌地区向けに733系電車を投入した。同社の事業計画を見ると、これらの733系電車は札幌―新千歳空港間の快速「エアポート」用とある。今回のダイヤ改正で快速「エアポート」の増発は行われていないので、新しくつくられた733系を快速「エアポート」に投入し、捻出された車両で札沼線の列車の運転区間の延長に充当したのかもしれない。このような方策は国鉄時代によく見られた手法だ。
慢性的な混雑が続く快速「エアポート」については、列車の増発に加え、1列車当たりの輸送力増強に努めなくてはならない。したがって、いかに評判が悪かろうとも「長手腰掛」、いわゆるロングシート主体の733系の新製は理にかなっている。
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