続くS-AWCでは前出のAWCに、「前/後輪間のトルク配分」、「左/右輪間のトルク配分」、「4輪ブレーキ制御」を加えた車両運動統合制御システムとして作り上げた。実車では2007年に発売された「ランサー・エボリューションⅩ」で具現化された。このS-AWCは進化を続け、今回の試乗車である前後ツインモーター方式のSUV「アウトランダーPHEV」や、コンパクトSUV「エクリプスクロス」にも受け継がれている。
「世の中にはさまざまな4輪制御技術が存在していますが、三菱自動車ではトラクション性能と操縦性・安定性を共にシームレスに向上することによって、どんな場面であっても誰でも操作通りにクルマが動くConfident Drivingを目指しています」と澤瀬さんは語る。
安全な運転環境を保つことができる
一般的な車両制御では、クルマの走行性能をつかさどるトラクション制御/旋回制御/安定性制御を運転状況によって切り替えることで成立させていることが多い。対してS-AWCでは、トラクション制御/旋回制御/安定性制御をつねに組み合わせながら違和感のないシームレスなクルマの動きを狙っている。どれか1つが作動するのではなく、3つの機能が連携して作動しているというイメージだ。
さらに澤瀬さんは「路面の状況など走行環境が変化しても、ドライバー操作に対するクルマの反応時間が同じであることを制御の基本ポリシーとしています」という。
具体例をあげて解説する。例えば、滑りやすい雪道でのカーブ走行と乾燥した舗装路でのカーブ走行では当然、クルマの動きは違ってくるが、ここを制御によって同じようなクルマの動きにしていくということだ。
もちろん、前出のタイヤ摩擦円は走行環境ごとに変化するし、制御もその範囲内となるわけだが、こうした制御によってドライバーには路面状況を問わず車両が限界付近で走行しているかわかりやすくなる。言い換えれば、クルマから発せられるメッセージをドライバーが感じ取りやすくなり安全な運転環境を保ちやすくなるのだ。
座学に続いて、このS-AWCの雪上試乗。これに先だって筆者は昨年、S-AWCを実装したアウトランダーPHEVやエクリプスクロスを乾燥舗装路で試乗していたのだが、なるほど澤瀬さんの説明通り、乾燥舗装路でみせたクルマの反応に近い動きを雪の上の走行でも体感することができた。
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