「摩擦力は垂直荷重に摩擦係数を乗ずること。ですから……」と物理の授業で聞こえてきそうな会話から始まった三菱自動車主催の雪上試乗会。声の主は三菱自動車工業EV・パワートレイン技術開発本部の澤瀬薫さんだ。
冬の恒例行事として自動車メーカー各社は雪上試乗会を開催しており、われわれメディア側は雪上や氷上など滑りやすい路面での走行性能を体感できる数少ない取材チャンスとしてこぞって参加する。昨今は先進安全技術や運転支援技術ばかりにスポットライトがあたりがちだが、各社では“走る、曲がる、止まる”といったクルマの基本的な性能を日々進化させている。その意味で、こうした雪上試乗会は最新モデルが誇る駆動制御システムを知る絶好の取材機会でもある。
最近は少なくなってきた座学の機会
2月上旬に三菱自動車が行った今回の雪上試乗会には3つの目的があった。①三菱自動車の誇る4輪制御技術の座学、②4輪制御技術を搭載した車両での雪上試乗、③大幅なマイナーチェンジを行った新型デリカD:5の雪上試乗だ。
冒頭の澤瀬さんからの言葉は①の座学でのもの。筆者を含めてクルマ好きが集まった雪上試乗会だが、クルマを無理なくスムーズに走らせることを学ぶ座学の機会は最近では少なくなってきた。この座学では三菱自動車が1987年から車両に実装してきた4輪制御技術の開発思想であるAWC(オールホイールコントロール)と、AWCを発展させたS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)について、事細かに解説をいただいた。
以下、要点を報告すると、まずAWCでは「4輪のタイヤ能力をバランスよく最大限に発揮させて意のままの操縦性と卓越した安定性を実現すること」を基本に、タイヤ摩擦円の前後力と横力を4輪ごとにコントロールすることに開発の着眼点が置かれた。実車では1987年に発売された6代目「ギャランVR-4」が搭載した4輪駆動の4WD、4輪操舵の4WS、ブレーキロックを防ぐABSでAWCを具現化している。
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