同時に運が悪く、日本で得た利益を元手にアメリカに投資していたのだが、日本でも収益を出せなくなったという事情もあり、現地の営業スタッフを雇えないという状況にあった。
動きたくても武器がなくて動けない、かといって自分一人では空回りする日々が続き、私の精神はすっかり疲弊してしまった。朝起きるのも外に出ることもつらくなった。メールを打つことさえ難しくなる。結果、「社長の役目を果たしていない」と自分を責め、悪循環にはまってしまう。思考はますます悲観的になり、うつ状態の直前に陥ってしまったのだ。
シリコンバレーの経営者間で盛んなコーチング
そんな状態の中、当時の私は「起業家はうつになりやすいのではないか」という仮説のもと「経営者 うつ」とか、「社長 心の病」などと検索したが、思ったほど参考事例は出てこなかった。
思い悩んだ社長たちは、誰にも相談することもなく、悩み抜いた挙げ句、最悪は命を絶つという悲劇的な事例こそあったが、心の病にかかった経営者がどのように克服したかという参考事例は皆無だった。そんな困り果てた状況の中で、私を立ち直らせるきっかけとなったのが「コーチング」との出会いだったのだ。
現状を打開するために、私は「とにかく人に会う」ことで外的な刺激を得ることに活路を見いだした。そんな中で「シリコンバレーの経営者の間ではコーチングが盛んだ」という話を耳にした。多くの経営者たちがコーチと契約し、メンタルのケアやビジネス面のアドバイスを得ているということだった。
コーチにもさまざまなタイプが存在するのだが、例えばもともとは起業家として成功し、会社を売却してミリオネアとなって引退し、後進を支援しているような人も多かった。
ちなみにコーチングには国家資格や州のライセンスといったものはない。アメリカには国際コーチ連盟(ICF)という団体があるが、資格試験を受ける条件や試験が厳しく、コーチング資格を持つコーチからは、安心してコーチングを受けられるというアメリカのビジネス慣習も存在する。アメリカの巨大企業GEのジャック・ウェルチ元会長などトップ経営者をコーチングし、「コーチングの第一人者」といわれるマーシャル・ゴールドスミスなどが有名だ。
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