ラーメンの日高屋が「とんかつ屋」を出す真意 1月末に埼玉・大宮に「とんかつ日高」を出店

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ハイデイ日高が展開する立ち飲み業態の「立ち飲み日高」(記者撮影)

好調を維持してきたハイデイ日高だが、足元では新たな課題が突きつけられている。同社の島需一取締役は「働き方改革の影響を受け、ここ半年くらいは夜間の客数が落ちている」と語る。また、人手不足を背景とする人件費の上昇も業績を圧迫する。ハイデイ日高は2018年4月に値上げを実施したものの追いつかず、今2019年2月期第3四半期(2018年3月~11月期)は売上高が前年同期比3.8%増の一方、営業利益が2.1%減と下向いた。

すでに焼き鳥業態を28店展開

今後の経営にも、同社は危機感を募らせる。「柱が日高屋の一本だけは不安だ。さまざまな業態を手がけておきたい」(島取締役)。このような考えから、同社はすでに焼き鳥業態を28店舗展開しており、焼き鳥業態の中にはカレーライスや天丼を提供する店舗もある。

とんかつ日高もこの業態拡張の一環で、ランチ需要の深耕を狙う。日高屋はちょい飲み需要、つまり夜の時間帯の稼ぎで成長してきたが、とんかつ日高は日高屋ほどのアルコール需要を見込めないため、アルコール販売が少なくても十分な利益を確保できるか試されている。

省人化運営に対応するために、店舗の効率的な運用も求められる。「あ、これで買うんだ!」。とんかつ日高の入り口近辺で、3人組の中年女性が声を上げた。同店では、タッチパネルを使った券売機が導入された。

日高屋ではこれまで、券売機を設置してこなかった。2杯目、3杯目のアルコールをわざわざ券売機に買いに行く顧客は少なく、販売量が落ちてしまう懸念があったためだ。その日高屋でも、現在は実験的に4店舗で券売機を設置し、動向を見極めている。

ハイデイ日高はさまざまな課題を乗り越えて、一段成長を描くことができるか。そういった意味で、とんかつ日高が軌道に乗り、多店舗できるかどうかは、今後のカギを握ることになるかもしれない。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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