強敵?JR東海「テキサス新幹線」に新たな挑戦者 ヴァージンUSA、親会社はソフトバンク

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縮小

TCRには日本の海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が101億円を出資、国際協力銀行(JBIC)が最大3億ドル(約330億円)を同社に貸し付ける計画があるが、事業費全体から見れば焼け石に水だ。

2月12日にはカリフォルニア州の新知事が資金難を理由に高速鉄道計画を縮小すると発表したばかり。テキサス州における資金集めが容易に進むとは限らない。

そこへ、ヴァージンの計画が表面化した。同社は、フロリダでは既存路線を有効活用して旅客列車を走らせた。テキサスでも完成後のTCRの高速鉄道線を借りるとすれば、利用者増につながる可能性がありTCRにとっては朗報だ。

一方で、ダラス―ヒューストン間には貨物線があり、フロリダ同様、貨物線を旅客鉄道に活用する可能性もある。貨物線の改良では時速200kmがせいぜい。スピードではTCRに太刀打ちできないが、ヴァージンは事業費が安い分だけ運賃を引き下げることができる。スピードよりも価格を優先する客はヴァージンに流れるかもしれない。

まだ「夢物語」だが…

ヴァージン・ハイパーループの試験施設(写真:Jorge Villalba/iStock)

また、ヴァージンはグループ内にハイパーループの開発会社も抱えている。低圧にして空気抵抗を最小限に抑えたチューブの中を磁気浮上式の車両が高速で走る。実現性に疑問視する専門家も少なくないが、ヴァージンによれば、ダラス・フォートワース地域交通審議会が2018年7月にハイパーループについて環境影響評価の認可を与える意向を示したという。同エリアで実現すれば、ヒューストンへの延伸も決して夢物語ではない。

ヴァージンの目論見書にダラス―ヒューストン間に関する詳細な説明が記載されているわけでなく、あくまで線が引っ張ってあるだけ。どのような方法でこの線を実現するは明らかになっていない。今はまだ「夢物語」にすぎない。「JR東海は何年も時間をかけて着実に環境影響評価などの作業を進めてきた。後からきた事業者が簡単に進出できるはずはない」と話す関係者もいる。

しかし、歴史を振り返れば、過去にもダラス―ヒューストン―サン・アントニオを高速鉄道で結ぶ計画があり、フランスのTGV方式がドイツのICE方式に競い勝った。1996年の開業に向け4000万ドルがつぎ込まれたが、資金不足で1994年に計画は中止となった。テキサスの広い大地は磁力のように高速鉄道を吸い寄せる。JR東海同様、ヴァージンがテキサスに本格的に進出しようと考えても不思議はない。

そして、JR東海が断念したフロリダの高速鉄道計画を実現させたのがヴァージンだった。テキサス進出に向けて、ヴァージンはどのような手を繰り出すのだろうか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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