酔客の汚物対策、電車運転士が「秘密兵器」開発 東急社員が現場の経験生かし日用品で手作り

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

開発を始めてから約1カ月後、ペット用吸水シートの裏側に両面テープを貼った試作品が完成した。4つの辺に貼った両面テープの裏紙を一気に剥がせるよう、ホチキスで留めるといった工夫を加え、シートの上には「清掃依頼中」と文字を打ったラベルも貼った。

最初の試作品。現行のシートよりサイズが一回り小さかった(記者撮影)

だが、実際に乗務員数人に配布して使ってもらうと、さまざまな課題が浮上した。1つはシートのサイズが小さかったことだ。

試作品は30×45cmのペット用吸水シートを使っていたが、これではカバーできないケースが多かった。もう1つは両面テープの粘着力が強すぎたこと。駅で清掃する際になかなかシートが剥がせず、時間がかかってしまったとの声があったのだ。これでは手間が増えて逆効果になってしまう。

ホームセンター巡りの日々

再び「素材探し」の日々が始まった。仕事の合間や休日にホームセンターを何軒も巡り、さまざまな種類のペット用吸水シートをそろえてサイズと吸水性を比較した。

「ペット用吸水シート持って仕事に来るんですよ。何の仕事なのかと(笑)」(鈴木さん)。両面テープも、調べてみると粘着力やさまざまな特性があった。「両面テープの世界も奥が深いんですね」と片瀬さんは笑う。

試作に使った両面テープ各種。最終的には5mm幅のテープに落ち着いた(記者撮影)

大量の試作品を車両に持ち込んで検証した結果、サイズは45×60cmのペット用吸水シートが偶然にも座席の座面や背もたれにぴったり合うことが判明。両面テープは、それまで使っていた幅10mmの事務用から、幅5mmで粘着性が強く剥がしやすい「プロ用」に替えると、強力かつ簡単に剥がせることがわかった。

ラベルライターで作った「清掃依頼中」という注意書きが目立たないのも難点だったが、これは乗務員に支給されている、座席にガムなどが付着していた場合に使う「このシートには汚れが付着しています」のステッカーに替えることで解決した。これなら手間もかからず無料だ。

試作を重ねてたどり着いた改良版の汚物カバーシートは「ペット用吸水シートがお徳用で1枚約10円、両面テープは約14円」(竹植さん)と低コスト。重量も約30gと軽いため、乗務員用のカバンに簡単に入る。改良版は6月に完成し、雪が谷大塚乗務区全体に配布した。大量生産には鈴木さん家族の協力もあった。

次ページ広がる利用「あって助かった」
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事