酔客の汚物対策、電車運転士が「秘密兵器」開発

東急社員が現場の経験生かし日用品で手作り

車内で汚物を発見するのは珍しいことではない。特に週末などは「いつ起こってもおかしくない」と3人は口をそろえる。いわゆる吐瀉物に限らず、最近はカップのコーヒー類を車内に持ち込む人が多いため、飲みかけのまま放置されたカップが倒れて床を汚すことも少なくないという。

「折り返し時間に車内を通ると、お客様は清掃に来たんだと期待されるんですよ。でも、すぐに発車する場合は『このあと清掃しますんで』と言わざるをえない。そのときのお客様の落胆した気持ちというのはすごく感じていました」と竹植さん。

同じ悩みを抱えている運転士は多く、鈴木さんは「見つけてもそのままの状態で運行しきゃいけないのって、どうなの?とみんな思っていた」と語る。

汚物カバーシート開発の直接のきっかけとなったのは、駅ホームで汚物に足を滑らせて転倒したという事例を片瀬さんが知ったことだ。

「何かかぶせてあれば危険を防げるし、不快感も減るのではないか」――。何かいい方法はないかと、片瀬さんは以前、業務研究発表会で組んだことのある鈴木さんらに話を持ちかけた。開発に向けた取り組みは2018年の年明けからスタートした。

ペットを見てひらめいた

「カバーする」という方向性は当初から決まっていたものの、実際に何を使えばいいかは試行錯誤の繰り返しだった。最初に考えたのは紙や段ボールだ。

ホーム上で汚物を清掃する様子(再現)。ホームの場合はおがくず、車内の場合は専用の凝固剤を使って片付け、その後に消毒する。汚物カバーシートがあると「汚れが広がらず清掃がしやすくなる」という(記者撮影)

「車掌をしていたとき、乗務員の先輩から飲み物がこぼれているときなどは新聞紙をかぶせて吸わせて捨てるんだよ、と教わっていたので」と片瀬さん。だが、紙はすぐにふやけてしまい、応急処置として「カバーする」という目的には向いていなかった。

そこで鈴木さんが着目したのは、自宅で飼っている犬のために使っていたペット用の吸水シートだった。「これって、ペットがおしっこをしても下に通らないようにできているんですよ。臭いも出ないようになっているんです」。

これをかぶせて密閉してしまえば防臭効果が期待でき、シートごとまとめて捨てれば清掃も楽になる。まさに最適の素材だった。

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