よくわからない理由だったが、それでも、「結婚を考えていないわけでない」という彼の言葉を、そのときはそのまま信用した。
「今考えれば、あのときに彼とのお付き合いをきっぱり断ち切るべきでした。ただあの頃の私は、“もう半年の時間を使ってしまったし、これを振り出しに戻したら次の相手がいつ現れるかわからない。ここでなんとか結婚してしまおうと、彼にすがってしまったんですね」
とにかく“結婚をすること”に執着をした。
「結婚に執着しすぎて、だんだん思考回路もおかしくなっていました。“この歳になっても結婚していない自分は生きている価値がない”と自己否定をしていました。そんな中で、私を選んでくれた彼には感謝しなくちゃいけない。こんな歳の私と付き合ってくれているのだから、彼はいい人に違いないって」
毎日 “1日も早く結婚をするために、今は頑張ろう”と、自分に言い聞かせた。
あるとき、仕事がものすごく忙しい月があった。残業続きで家に帰ると倒れ込んで寝てしまうような日々が続いた。
「もうヘトヘトに疲れていたので、週末のデートは彼の家に出来合いの総菜やお弁当を買っていきました。家の掃除や片付けもしなかった。そうしたら、彼から、『本当に僕と結婚したいなら、もっと尽くすんじゃないの?』と言われたんです。普通ならそこで、『こっちだって疲れているのよ!』と反論するのでしょうが、そのときも私は、“ああ、私の努力が足りないから結婚できないんだ”と思ってしまったんですね」
人間関係を築いたうえで、その先にあるのが結婚だ。しかし、洋子は“結婚”という目的を何が何でも達成したいがために、負の要素にも目をつむり無理くり帳尻合わせをしていた。結果、気持ちが追い詰められて正常な判断ができなくなっていったのだろう。
「まるで富士山に登頂している感覚でした。彼と付き合うのはこんなに苦しいのだけれど、結婚さえすれば頂上に行ける。結婚というゴールにたどり着くことができる。家庭を築けば、私は楽になれる」
こうして、付き合ってから1年半の月日が流れた。そのときに、また、「そろそろ結婚を考えてもいいんじゃないの?」と水を向けた。すると、こんな答えがかえってきた。
「なんでそんなにいつも僕を焦らせるの?」
そこにイラッときた洋子は、語気を強めて言った。
「これだけ付き合って答えが出せないなら、結婚をする気は最初からなかったんじゃないの?」
すると、雅弘は言った。
「結婚しないとは言ってないでしょう。とにかく3カ月待ってほしい」
またここでも1年半という月日を無駄にすることは、洋子にはできなかった。そして、言われるがまま3カ月を待つことにした。
1カ月後に来たメールの内容とは
すると、3カ月ではなく1カ月後にメールがきた。
「そのメールを読んで、彼の言ってるいことにあきれてしまって、やっと洗脳が解けました。“何が何でも結婚”という呪縛からも解放されました」
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