これで苦しい婚活にも終止符が打てる。雅弘との交際をスタートさせたのを機に、結婚相談所も退会した。
しかし、1年半後に待っていたのは、予想を覆す展開だった……。
洋子は、誰もが知る一流企業の総合職として働いている。福利厚生もしっかりとしているので、“このまま一人で生きていこう”と覚悟を決めたのなら、それが可能な十分すぎる年収も得ていた。洋子の年収があれば、結婚するよりも独身でいたほうが自由に人生を謳歌できるかもしれない。
それでも、彼女は、“結婚”がしたかった。容姿端麗、有名私大を卒業して一流企業で働く。そんな自分の人生の中で、唯一欠けているピースは、“結婚”だけだったのだ。
「どうして私がここまで結婚にこだわったのか? それは、親からの刷り込みが大きいと思うんです。母はバリバリのキャリアウーマンでしたが、父と結婚をして兄と私を育てながら家庭と仕事を両立させてきた。“結婚をして子どもを育ててこそ一人前”という考えの人でした。私や兄が30歳を過ぎてから、母のいちばんの心配の種は子どもたちの結婚でした」
そんな中、兄は30代後半で結婚をし、すぐに子どもも授かり家庭を築いた。
「実家に帰省すると、 “誰かいい人はいないの?”と、決まって聞かれました。長年連れ添っている父と母は今でも仲がいいですし、帰省したときに会う兄の家族もとても幸せそうに見えました。私も1日も早くその仲間に入りたかった」
そして、真剣に婚活を始めたのだが、結婚したいと思える相手には巡り合えなかった。そんなときに雅弘に出会い、やっと苦しかった婚活の出口が見えたような気がしたのだ。
「結婚」という言葉を出すとはぐらかされる
最初は物腰が優しい男性だと思っていたのだが、お付き合いを始めてみると、雅弘はかなり変わった性格だった。
「仕事を終えるとまっすぐ帰宅する。とにかく外が嫌いな人だったんです。デートはいつも彼の家。お互いに一人暮らしをしていましたが、一度も私の家に来たことがなかった」
初めて彼の家に行ったときには、その散らかりように驚いた。ゴミ屋敷とまでいかないが、物が散乱し、掃除をしている形跡がなかった。
「キッチンも使えるような状態ではなかったので、私がきれいに掃除をしました。外に食事に行くのが嫌いな人だったので、デートの食事は彼の家が多かった。私があらかじめ作った料理をタッパーに入れて持っていったり、泊まった翌日は、簡単な料理を作ったりしていました」
そんな付き合いを続けているうちに半年が経ち、洋子の37歳の誕生日が訪れた。
「『半年付き合ったのだから、結婚をそろそろ考えない?』と、切り出してみたんです。そうしたら、『まだ半年だし、今僕が仕事をしている仲間は誰も結婚していない。独身のコミュニティーの中にいるから、僕が結婚すると急に言い出したら、仲間との関係が壊れるかもしれないから、もう少し様子をみたい』と言われたんですね」
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