北米テレビ市場で乱売合戦、日本メーカーは軒並み大流血!!
「いまや米国の家電業界は、毎日がブラック・フライデーみたいなものだ」。年末商戦のまっただなか、大手家電メーカーの北米販社幹部はこう嘆いてみせた。世界的な金融危機の震源地・北米で、家電花形商品の薄型テレビを巡る安売り合戦が泥沼化している。
年間最大の特売日で、米国年末商戦の最初のヤマ場である11月末のブラック・フライデー。家電量販大手のベストバイは20近い薄型テレビの目玉商品を用意し、パナソニックの50インチ・プラズマを899ドル、韓国サムスン電子の40インチ・液晶も799ドルで販売。他の大手流通では、シャープの46インチ液晶が899ドル、ソニーや東芝の40インチにも800ドル台の値札がついた。いずれも日本の相場の半値以下である。
日・韓有力ブランドの衝撃価格が続出した今年のブラック・フライデーだが、12月に入っても一向に安売り合戦が収まる気配はない。たとえば、シャープは米流通最大手のウォルマートと組み、14日から10日間に渡るクリスマス用の特売を実施。なんと32インチ液晶が398ドル、日本円にして4万円を切る衝撃的な価格がチラシの一面を飾った。年初から比べると、年末商戦における大手ブランドの相場は3割前後も下落している。
世界中のテレビブランドが集まる北米市場は激しい価格競争が宿命とはいえ、特に今年の年末商戦は値下げ競争が凄まじい。秋口まではウォン安を背景としたサムスンの価格攻勢がもっぱら目立ったが、11月に入ると大手メーカーによる乱売合戦へと様相が一変。背景にあるのが米国消費の変調だ。ブラウン管からの買い換え需要により、北米・薄型テレビの店頭販売台数は夏場まで前年比3割増以上のペースで推移。が、9月のリーマン・ショック直後から勢いを失い、10月の伸び率は1割にまで鈍化。こうした事態に危機感を募らせた各メーカーは、大量に積み上がった在庫を一刻も早くさばこうと、一斉に採算度外視の安売りに走ったのだ。
09年は市場が2ケタのマイナス成長へ
北米の市場規模は日本の3倍以上もあり、欧州と並ぶ最需要地だ。そこでの価格暴落は欧州や中国にも飛び火。急激な円高も重なり、家電メーカーのテレビ事業は壊滅的な打撃を被っている。国内勢最大手のソニーは、2008年度の公約に掲げていたテレビ事業の黒字化計画がとん挫。前期730億円だったテレビの赤字幅は、縮小するどころか、逆に1000億円近くにまで拡大する可能性も出てきた。パネル内製によるコスト競争力を武器に国内勢で唯一、テレビ事業で毎年利益を稼いできたシャープとパナソニックも、この下期は多額の赤字計上が確実だ。「問題は台数よりも値段。年間2割程度の単価下落は覚悟していたが、現実ははるかに厳しい」(パナソニック幹部)。
しかも、09年の市場環境はさらに深刻である。米有力調査会社ディスプレイサーチがまとめた最新の市場予測によると、世界的な景気悪化により、09年の世界の薄型テレビ市場規模は金額ベースで08年推計比15%減少する見通し。成長産業であったはずの薄型テレビが、とうとうマイナス成長に陥るというのだ。「価格下落はさらに進むが、市場の過半を占める先進国の台数伸び率は良くて微増程度。ワーストシナリオではさらなる下振れもありうる」(鳥居寿一・テレビ市場担当アナリスト)。電機業界にとって、来る09年は文字通りの正念場である。
(渡辺清治 =東洋経済オンライン)
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