創業から変わらない「世直し」という事業コンセプト
楠木:江幡さんは、リクルートに在籍していた頃には、ビジネスを次々に創り出す「リクルートの立ち上げ屋」と言われていて、その後は、若くしていわゆるIT企業を創業しました。当時は、「ネットベンチャー」という言葉が盛んに使われていた時期ですよね。
江幡:そうですね、オールアバウトを立ち上げたのは2000年ですから。
楠木:そんな時代ですから、イメージとして華々しい成功者という感じがあるじゃないですか。見た目もイケメンど真ん中(笑)。でも、実際に仕事などを通じてお付き合いしてみると、チャラチャラした感じはまったくなく、キャラクター的には真逆の人。かなりの体育会系ですよね。
江幡:高校生のときはハンドボールをやっていまして、その前は剣道でした。
楠木:そう、体育会系といっても、ラグビーとかサッカーじゃないところが、またイイですね(笑)。どうしてハンドボールや剣道をやられたのですか。メジャーなものが嫌いというか、マイナー好きみたいな部分があるとか。
江幡:剣道は小学生になる前からやっていたのです。メジャー嫌いというわけではありませんが、テレビはあまり見ないですね。
楠木:いずれにしても、世間が抱きがちな、IT企業の経営者の俗なイメージからは懸け離れている。オールアバウトの事業も、昔から「世直し」という古風な言葉を使われていますし。
江幡:「世直し」はリクルートにいた20代の頃から言っていました。
楠木:そういう意味では、経営者として昔からブレていないですよね。インターネットの世界では珍しいですね。ご自身の好き嫌いに忠実に、好きなことだけを深堀りしているということだと思います。
江幡:オールアバウトの事業として好きなところは、まさに「世直し」であるところです。具体的に言うと、モノやサービスを提供する側と、それを購入する側との「情報の非対称性」をなくす事業です。リクルートでは、それを情報誌という形で行っていましたが、カバーする領域には限界があります。そこで、インターネットを使って、いろいろな領域の専門家が、消費者の情報選択の支援をする。それが、「世直し」につながる部分だと考えているのです。
楠木:ネット業界は、浮き沈みの激しい業界ですが、そんな中でオールアバウトはしぶといですね(笑)。今までやってこられたことが、いよいよ花開く状況になってきたんじゃないかと思います。
たとえば、この「東洋経済オンライン」というのは、ネットを使ったメディアではありますが、基本的には東洋経済新報社から出版されている、雑誌や書籍の内容をネット上で提供している。しかし、オールアバウトの業態というのは、先ほど江幡さんがおっしゃっていたように、雑誌だけでは提供できない、ネットならではのメディアとして機能していますよね。だからといって、ツイッターやフェイスブックのような、不特定多数のユーザーが勝手にコンテンツをどんどん入れていくタイプのソーシャルメディアでもない。考えてみると、立ち位置がユニークですね。
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