「日本人の意識」調査は1973年から実施されていますが、先の2つの質問は1993年に追加されたものです。とりわけ1970年代においては、結婚するのも、結婚したら子どもを持つのも「普通」であったので、あえて尋ねるような質問でなかったからだと考えられます。東北太郎さんのご両親も、こうした意識を持った世代にあたります。
世代間で家族観にギャップがあっても、離れて暮らしていれば、盆と正月に夫の実家に帰省するかどうかという問題があるにせよ、日常的に干渉されることはありません。ただ、東北太郎さんのように隣で暮らしているとなれば、意識が違うのは仕方がないですませることができず、現にお悩みのように衝突が生まれてしまいます。
かつての日本で離婚は「ご法度」だった
ご両親の立場からすると、やはり代々守ってきた土地や墓が大切であり、それを引き継いでくれる長男の東北太郎さんは、兄弟の誰よりも大切な存在なのだと思います。それは奥様からみれば、「孫より息子がかわいい変わった人たち」と映るのでしょう。
今の時代の風潮とかけ離れていることに、ご両親がまったく無自覚だとは思えません。それでも、自分たちの価値観を押し付けてしまう理由の1つとして考えられるのは、ご両親の世代では離婚がいわば「ご法度」であったことです。
かつて日本で離婚は男女どちらにとっても「恥ずかしい」ことでした。とりわけ女性は親の「メンツ」もあって実家に帰ることを許されませんでしたし、経済的な自立も困難でしたから、嫌な思いをしても家に踏みとどまるしかありませんでした。ご両親もどうせ東北太郎さんたちが離婚するようなことはないと「過信」してしまっているのかもしれません。
ご両親と奥様の関係がこれだけこじれてしまっている以上、間を取り持てるのは東北太郎さんしかいません。「妻と子どもが自分の家族だから、そこを中心に生活をしたい。あまりにも干渉されると離婚もありうる」とまずはご両親にはっきり伝えてください。
そうすれば、奥様も安心するはずです。確かに、来世は次男に生まれれば、このような苦しみはないわけですが、今世は長男なのですから諦めてこの役割を引き受けるしかありません。
ただ、その際、ご両親が隣に住んでいることで、子育てなどではとても助かっているという話もするべきでしょう。さらに言うと、相手にだけ変わることを要求すれば、今度は、東北太郎さんが自分たち世代の価値観を押し付けることになってしまいます。古い価値観は「間違い」で、新しい価値観は「正しい」という発想では対立は深まるばかりです。
面倒くさいと思われるかもしれませんが、どこが譲れないのか、どこは譲れるのか、ご両親と東北太郎さんご夫婦で膝をつき合わせて話し合う機会を持つべきです。目を逸らしてこれをおろそかにすれば、事態は悪化するばかりで、より面倒なことになってしまいます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら