「本から学ばない人」と「読書家」の致命的な差

齋藤孝「読書の効用は疑似体験にある」

テレビのコメンテーターでもおなじみの明治大学教授の齋藤孝さん。彼が提唱する「読書のメリット」とはいったい?(写真:kevron2001/iStock)

前回、「スマホを『1時間以上』見続ける人が陥る悪循環」で紹介したように、現代人の多くはネットやSNSを利用しすぎる傾向があります。自分なりにルールを定めて、ネットにのめり込む時間を減らした次はどうするか? 私は皆さんに本を読むことをお薦めしたい。

「沈潜する」時間を持つ

旧制高校の学生が使った言葉で「沈潜(ちんせん)する」というものがありました。自己研鑽すること、自分を磨くことを「沈潜する」と表現したのです。とてもいい言葉だと思います。

忙しい毎日、膨大な情報洪水に流され浮遊するのではなく、「沈潜する」時間を持ちたい。本を読んで著者と一対一で対話する。あるいは自分自身と対話する。作品の本質に迫り、グッと自分の深い部分や心の奥底に沈んで潜っていく感覚です。そこにはネットでの画像や動画の派手さや、SNSで短い言葉が飛び交う喧噪はありません。

静かな無音の空間、ゆったりとした時間の中で他者と出会い、自分自身と出会う。実際、海で潜った人はこの沈潜の雰囲気をよく知っているのではないでしょうか。3メートルも潜ると、もう外界の音は聞こえません。わずかな光が差し込み、かえって太陽の光の存在を強く感じます。沈黙の世界の中で、ゆったりと泳ぐ魚に出合ったりすると、思わず声を上げたくなるほど感激します。

まさにそんな心と精神の中に沈潜すると、今まで聞こえなかったかすかな音や、わずかな光に気がついたり、新たな発見や出会いがあったりする。今の世の中、「沈潜する感覚」があまりにも少ないように思います。人間の精神の深いところへ沈み込み、今まで気がつかなかった自分の無意識の世界、内面の世界を改めて発見する。それが「沈潜力」です。

毎日の1時間を「沈潜する時間」に変えるだけで、世界は大きく変わって見えてくるのではないでしょうか。深い世界に沈潜するということは、時間をさかのぼることでもあります。

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