「よく聞こえるスマホ」はこうして生まれた

米国で大躍進、京セラ革新技術の開発秘話

そこで、セラミックの圧電素子部材を実際に携帯端末に搭載したらどれだけ音質が改善できるのか、試してみようということになった。ただ、初めはみな半信半疑だった。はたしてそんなに調子よくいくものかと。

ところが、実際に試作機で会話してみると、思った以上によく聞こえる。

開発に着手した頃合いもよかった。アジア最大級の最先端IT、エレクトロニクス総合展である2011年のCEATECが、まもなく開催されようとしていた。そこでKDDIのブースで、新しい音のテクノロジーとしてSSRのお披露目を行った。

反響は上々。この年の「CEATEC AWARD」も獲得した。「これは世の中に求められているものだ」と、実感が沸いてきた。大槻をはじめとした開発陣は、予想を上回る手応えを感じていた。

量産化への2つの不安

だが、本当の苦労はその後にやってきた。「われわれは技術屋なので、音さえ出ればいいという認識だったんですよ」と、大槻は自分の甘さを振り返る。

試作機はあくまで試作機でしかない。どんなにいいものが試作できても、それは一種“匠の技”のようなもの。何十万台、何百万台と量産する時に、はたして同じ品質のものが作れるのか。さらに、最終製品として消費者に届けるには、単に聞こえるというレベルでは納得してもらえない。耳障りのいい音がある、というわけだ。

そこからはKDDIの協力を得て、音質の改善に取り組んだ。セラミックの厚さを変えてみたり、積層数を変えてみたり……。結局、セラミックは当初想定していた層の倍ほどを積み上げた。一層積んではテストをする、の繰り返し。音圧、音の平坦度を何度も何度も調整した。

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